「すれたんでっかいな。 私 また当たったんかしらと思いましたがな。→
いやいや 僅かなすれやったらね
銭くれまんねん。 なんぼほど すれた?」。
「たった八百五十」。
「それは外れてんねんがな」。
またぞうろう
ガラガラ~ン ガラガラ~ン。
「第二番の御と~み~」と声がかかりますと
今まで こっちの のろけを言うてた人。
「すんまへん。 ちょっと 前やらして…」。
「すんまへん。 ちょっと 前やらして…」。
「いやいや
いよいよ私の番になってまんねんがな。→
女子と 一杯飲んで寝るかね→
もう うどん食って寝るかの境目になってまんねんさかいに。→
さあ やってくれ! さあ やってくれ!
辰やろ?」。
「辰の…」。
「おい 出たな。 八百か!」。
「八百…」。
「どんなもんじゃい。 五十やろ!」。
「五十…」。
「もしもし。 とうとう この人祈りだしはりましたで。→
これは うどんやおまへんで。
一杯飲んで 寝はりまっせ」。
「一番か!」。
「七ば~ん~」。
「ふう~」。
「また こんな人 出てきたがな」。
三番も突っ切りまして
当たりを正面に張り出しますと→
皆が 潮の引くごとく
どやどやっと帰ってしまいます。
あとへまいりましたのが
先ほど もう一人いました→
この からっけつのおやっさんで。
「おお えろう人が出るな。ええ? 高津神社。→
ああ 宿屋の主の言うてた富くじやな。→
すんまへん。あの~ 富くじは どないなりました?」。
「もう済みましたで」。 「当たりは?」。
「正面に書いて 張ってますわ」。
「さよか。 ほ~う 立派に書きよったな。
ええ? 何 何?→
一番が 子の千三百六十五番。
ほうほう。→
二番が 辰の八百五十七番。 ほう。→
三番が 寅の九百六十三番。干支頭に竜虎。→
なかなか
勢いのええ番号がそろうてはるがな。→
ええ~ わしもな ここに
宿屋の主から買うた札があんねん。→
わしのんが 子の千三百六十五番やな。→
あれが 子の千三百六十五番。→
二番が 辰の八百五十七番。
三番が 寅の九百六十三番か」。
「当たらんもんやな。 ええ?
あれが 一番が 子の千三百六十五番。→
二番が 辰の八百五十七…」。
「わしのんが 番五十六百三千の子。→
逆さまやな。→
わしのんが 子の千三百六十五番。あれが 一番が 子の千三百六十五番」。
「あの『子』… この『子』…。→
子と子 千と千 三と三 百と百と六と六と 十と十と 五と五と 番と番。→
アタアタアタアタ アタアタアタアタ…」。
「どないしなはったん?」。
「アタアタアタアタ…」。 「当たったら
すぐに うち帰って待ってなはれ。→
世話方が金持って運んでくれはりますわ」。
「アタアタアタアタ…。→
はい ただいま」。
「まあ 旦さん どうあそばした?→
ガタガタガタガタ震うてからに。
どうあそばした?」。
「ああ 震いますとも。 今な
先方へ金の取り引きで行ったところが→
判がどうの 証文がどうの もう
ごてくさ ごてくさ 言うもんやさかい→
喧嘩まくで帰ってきましたわ。
今日は気分が悪い。→
もう誰が来ても会わん。
早いこと 床をとっておくんなされ。→
アタアタアタアタ…」。
布団をかぶって寝てしまいます。
一方 宿屋のおやじも
半分もらえるという欲がございますので→
用事をそこそこに済ませまして
高津神社の方へやって来よって…。
「わしもな 昨日 旦さんに買うてもろうた
札の控えが ここにあんねん。→
わしのんが 子の千三百六十五番。
あれが 一番が 子の千三百六十…。→
五番…
アタアタアタアタ アタアタアタアタ…」。
「また こんな人 出てきたがな」。
「アタアタアタアタ…。→
はい ただいま。
あたった あたった あたった あたった」。
「あんた 何を食べたんや?」。
「何を食べた? そやあれへんがな。→
あの