2018/08/27(月) 22:25〜23:10 プロフェッショナル 仕事の流儀「撮って、僕らのこころ〜昆虫写真家・栗林慧〜」[解][字]


だが これで満足しないのが栗林だ。
(栗林)こっちへ向かって

歩いて下さい。
昆虫写真は 人や人工物を
入れないのが常識。
だが 栗林は
あえて人の姿を写し込む。
(シャッター音)
(栗林)フフフフ。
誰もいない構図に比べ
人が加わった事で→
チョウが生きる里山の気配が
匂いたった。
昆虫が活動しない 冬や雨の日。
栗林さんは 自宅の工房に籠もり撮影機材の開発に没頭する。
写真家は プロといえども→
既製のレンズなどを用いるのが一般的。
でも それでは
自分だけの一枚は撮れないと→
栗林さんは


手作りに こだわってきた。
「虫の目レンズ」も その一つ。
内視鏡や監視カメラのレンズを組み合わせ→
20年の試行錯誤の末
世界に先駆けて開発した。
(シャッター音)
虫に ピントが合っているにもかかわらず→
背景まで見える代物だ。
そして この春 半年がかりで新たな機材を作り上げた。
カメラの横から出た2本の棒は
光センサー。
その間を昆虫が通過すると→
2万分の1秒の超高速シャッターが→
自動で切られる仕組みだ。
フィルムの時代にも作った事はあったが→
最新技術を もってすれば→
飛び回る昆虫をはるかに立体的に→
生き生きと写せるはずだ。
春の初め。 自宅の庭にあるミツバチの巣で→
センサーカメラを試す事にした。
(ハチの羽音)
(センサー音)
あ 今 いいのが撮れた。
手応えは十分。
ひとつき後 本番に臨んだ。
ねらうのは ハナバチの一種。
45年前に撮って以来の古い友だちだ。
だが 半日待っても
ハナバチは姿を見せなかった。
例年なら ありえない事態だった。

それから ひとつき余り。
栗林は
「友だち」を探し続けていた。
彼らが好む花を見て回り
羽の音に耳を澄ます。
だが その気配はない。
一縷の望みをかけカメラを仕掛ける事にした。
栗林を 栗林たらしめてきた
流儀がある。
♪♪~
だが この日も4時間粘ったもののハナバチには会えなかった。
それでも栗林の目は
既に明日へと向けられていた。
虫たちを こよなく愛する
栗林さんは→
虫遊びの名人でもある。
例えば ハンミョウの幼虫釣り。
(取材者)お~ すごい。
(栗林)フフフフ。
栗林さんにとって この遊びは→
掛けがえのない記憶と結び付いている。
栗林さんは 旧満州で生まれ
長崎で育った。
自然を愛する父は
たくさんの虫遊びを教えてくれた。
その一つが ハンミョウ釣り。
大好きな父と夢中で競い合った。
でも 小学3年生の時
父は病で亡くなった。
一家は 母の親戚を頼って

東京へと引っ越した。
でも栗林さんは 都会の学校に
なかなか なじめなかった。
そんな栗林さんを
救ってくれたのは虫だった。
家の近所の荒川の河川敷。
父と遊んだ ハンミョウ釣りは嫌な事を忘れさせてくれた。
ある時 同級生の前で
釣りをしてみせた。
一瞬で全てが変わった。
「大好きな昆虫のカメラマンになりたい」。
高校卒業後 自衛隊に入ったあとも
暇を見つけては写真を撮った。
アマチュアながら
次々と賞を獲得。
30歳 プロの昆虫写真家に
転身した。
当時 昆虫を専門とする
カメラマンは ほとんどおらず→
次々と仕事の依頼が舞い込んだ。