2018/09/26(水) 19:30〜20:45 NHKスペシャル「“樹木希林”を生きる」[字]
希林さん演じる老婆の家には
行き場のない人たちが
集まって暮らしています。
なぜ、見ず知らずの他人を
老婆は受け入れたのか。
希林さんはリアリティーを
感じられないでいました。
是枝≫どうします?
どうすれば映画の中でリアルな世界を描けるのか。
希林さんは繰り返し
監督と議論を重ねました。
その後、老婆には
夫から捨てられた過去があった
という設定が加えられました。
≫そうだけどさしかたないだろう。
樹木≫あ、お構いなく。
夫が別の女と作った家庭に老婆が
金をせびりにいく場面を作り
その複雑な内面を描き出したのです。
≫これ少ないですけど。
樹木≫あー…そうですか。
じゃあ、遠慮なく。
≫母のことは本当に申し訳なかったと思ってます。
樹木≫いや
あなたに罪はないですよ。
あらら、また3万だ。
さらに女優にとっては
ヌードになることより
恥ずかしいのよと言いながら
入れ歯を外して
撮影に臨んだ希林さん。
とことんまで
自分をさらけ出しながら
役に向き合っていました。
11月。
3本目の映画の撮影が
始まりました。
犯罪に手を染める
老婆から一転して
次に演じるのは…。
りんとしたたたずまいの茶道の師匠です。
わきの下に卵一個を
挟んだような気持ちで。
黒木≫よいしょ。
樹木≫よいしょはなし。
黒木≫はいはい。
樹木≫「はい」は一つ。
黒木≫はい。
樹木≫重たいものは軽々と。
軽いものは重々しく持ちます。
いやいや!入るときは左足から。
左足から、それで、はい。
敷居と畳のへりは絶対、踏まないように。
このころ、希林さんは
新たな映画への出演依頼をすべて断っていました。
私は、その真意を
尋ねることにしました。
木寺≫この4本で終わりにしよう
と思われてるのかどうか
っていうのを
聞きたいと思ってたんですけど。
樹木≫そりゃ
終わりになるんなら
終わりでいいなと思うし。
そこまで、いけるかどうかもおぼつかないような体調なのよ。
木寺≫そうなんですか?
樹木≫うん。
今、こうやって、あれしてるけど
筋力が、ずーんと落ちちゃって。
筋肉がね。
木寺≫一見そうは全然、見えないですけども。
樹木≫あー…一見ね。
その一方で、女優以外の仕事は引き受けていました。
はあ…。
(せき)
(せき)
木寺≫大丈夫ですか?まだ、せきが。
樹木≫いや、いろいろするのよ。
いちいち気にしてたらきりがない。
(せき)
≫よーい、スタート!
≫こんにちは!
樹木≫はーい!
希林さんは
なぜ現場に立ち続けるのか。
そして
取材を続けさせてくれるのは
どうしてなのか。
希林さんの心の内を知りたいと思いました。
樹木≫どうだろう。
人は、どう思うか。
希林さん自身も
みずからの内面を
うまくことばにできないことに
もどかしさを
感じているようでした。
樹木≫急に「やります」って言ったって、だめなんだよ。
もっと早めに
ちゃんとやっててくんないと。
いいよ、いいよ、入れてよ、これ。