2018/11/10(土) 10:25〜10:55 大阪環状線 Part4 ひと駅ごとのスマイル #05[字][多]【鶴橋桐山漣&徳永えり】
三脚立てて 映画撮ったなとか。
ははっ。
脚本は? まだ書いてる?
もう書いてない。 普通に働いてる。
でも あのころは→
あほみたいに
夢中になっとったよね。
あほみたいって。
けど 走ってる車のボンネットにしがみついて→
落ちて 骨折ったり→
電柱の上から真下の人物 撮ろうとして→
いきなり
高所恐怖症だったことに気付いて→
下りらんなくなったり。
そうそう。
びっくりするぐらい
怒られてたやん。
はははっ。 撮影許可取らずに
勝手に店ん中 撮って→
すみません 学生ですって
頭下げながら→
けど しっかりカメラ回してね。
ちょっと待って。頭下げたん 私やからな。
勇作のカメラ
止めたらあかんって→
必死でお店の人の前
立ちはだかっててんから。
ははっ かすみのおかげだって
わかってるって。
でも 今
この街で映画撮ってんのも→
あのころの がむしゃらな気持ちを
取り戻したい→
みたいなところからなんだよ。
でも ほんまに映画館でかかる映画作れるようになって→
すごいよね。
いや→
本当に作りたいものは
まだ撮らせてもらえてないんだ。
俺が書いたシナリオ→
誰も金出すって言ってくれない。
どんな話?
監督志望のだめ男が→
脚本家の卵と再会する話。
うわ~ まだあるんだ この店。
あっ 勇作 かばん開いてんで。
ん?もう 昔っから→
よう開けっぱなしやった。
えっ? えっ?
うそ。
まだ持ってたん?あっ それ。
かすみがくれた台本カバー。
あぁ…。
勇作 撮影に夢中になると
すぐ台本どこに置いたか→
わからんようなって捜すんやもん。
目印代わりにってね。
そう。
俺 台本どこやったっけって→
大事な大事な脚本なのにな。
けど ほんまの話な。うん。
私は勇作の才能を信じてたから→
言いたないことも言うて→
あほやな ドジやなって
思いながらも→
必死で後 追いかけながら
一緒におってん。
そんな子に支えられてたのに→
10年たってもオリジナル企画 いっこも通らん。
ふふっ 自己評価が
低すぎるからあかんねん。
映画を作るってさ→
自分が信じる世界を描いてみせるってことやろ?
それやのに
自分を信じられへんから→
どこも企画と
向き合ってくれへんねやんか。
ほら 少しは しゃんとし。
雲の形が気に入らんとか言うて→
撮影中止にしとった男やろ。
あんたはキューブリックか黒澤明かって思ってたけど。
あっ。
私 今 キューブリックって言葉10年ぶりぐらいに口にした。
ははっ。
♪♪~
何?
かすみが好きだった映画あったろ?
男女が
街を歩いてしゃべってるだけの。
「恋人たちのディスタンス」。
あっ そう それ俺も3回はつきあわされた。
うん そうやったね ははっ。
リ~ン。えっ?
ほら 電話のシーンだよ。
あっ。
リ~ン。
ガチャ。あっ もしもし かすみ?
うん もしもし。
どうしたん 何かあったん?
なあ どないしよ