広がっていました。
Zi‐A社を隠れみのに
不正が行われているのではないか。
海外などでの調査が進むにつれ
数々の不正の実態が分かってきました。
レバノンやブラジルの住宅を
購入するため
Zi‐A社を通じて
20億円あまりが
支出されていました。
ヨットクラブの費用や家族旅行の代金まで
会社側に負担させていました。
それとは別に、株価に連動した報酬を受け取る権利
40億円分を
公表していませんでした。
不正を突き止めたときの衝撃を
関係者はこう証言しています。
≫調査を進めていたメンバーは
取締役会で不正の責任を問うことも検討しました。
しかし社内の主要なポジションを
ゴーン前会長に押さえられていたため
取締役会での不正の追及は
難しいと判断。
刑事責任を問うしかないと
決断しました。
そこで目をつけたのが
近く日本で導入されることになっていた
司法取引でした。
ゴーン前会長の不正に関与した人物でも
捜査に協力すれば
起訴が見送られる可能性があります。
メンバーは
実行役の1人とみられる
外国人の執行役員X氏に
注目していました。
不正への関与に
戸惑いを感じていることを
把握していたのです。
そこでX氏に司法取引の存在を説明して説得することにしました。
≫X氏は説得を受け入れ
司法取引に協力することを決めました。
ゴーン前会長の
不正を追及する動きと
時を同じくして日産内部では
ある危機感が強まっていました。
極秘の調査が始まっていた
そのころ。
日産社内を揺るがす
大きな出来事がありました。
2月、ルノーのCEOに
再任されることが決まった
ゴーン前会長は
ある声明を出しました。
≫海外では、ルノーが日産と
合併の協議をしていると
報じられました。
ルノーの筆頭株主であるフランス政府は
これまで日産との関係を
強化するよう、ゴーン前会長に
再三求めてきました。
これに対してゴーン前会長は日産の独立性を担保すると
繰り返し主張していました。
≫しかし日産の社員たちにはゴーン前会長が再任を機に
態度を一変させ
フランス政府の要請を
受け入れたのではないかと
映っていました。
ルノーの支配が
強まるのではないか。
さらに翌月
追い打ちをかけるように
ゴーン氏は、ルノーと日産の
それぞれの研究開発部門を統合すると発表。
車の開発まで
ルノーの主導になれば
日産の核心部分を失いかねないと
社員は不安を募らせました。
≫当時の日産内部の空気について
現役の社員が
初めて
インタビューに応じました。
≫かつてはルノーの出資を受けて
深刻な経営危機を脱した日産。
業績が回復した今
売上高や販売台数などは
日産がルノーを
大きく上回っています。
組織の危機を
感じる人たちにとっても
ゴーン前会長の不正を追及し
解任することは
好都合だったのではないか。
長年、ゴーン前会長の取材を続けてきた井上久男さんは
こう読み解きます。
≫逮捕の半年前。
不正をつかんだ日産側が
東京地検特捜部と接触。
これまでに把握した不正の証拠を
提出すると伝えました。
その中には実行役のX氏らが