2018/11/26(月) 22:25〜23:10 プロフェッショナル 仕事の流儀「人工ボディ技師・福島有佳子」[解][字]


見た目のリアルさだけではない。
指として機能するように

細かな工夫が施されている。
いかにすれば 3本の指が
もつれることなく 動かせるか。
ミリ単位で修正しながら
指の角度を探っていく。
作り上げた人工ボディを納品する。
田中さんの想いを形にすることはできたか。
これが 田中さんの新しい右手。
これが 福島のフルオーダーだ。
突然ですが 皆さん
どの指が人工ボディだか 分かりますか?
答えは 小指。
このリアルさを生み出す秘密は福島さんの色作りにある。
使うのは 赤 青 黄色 茶色の
シリコン絵の具。
ヘラ1本で 巧みに色を混ぜ合わせ
肌の色を作り上げていく。
これまで作った色は なんと1,300色。


その全ての配合を福島さんは記憶している。
今 作っているのは 指のベースの色。
更に 同じような色を3つ作った。
(福島)これも いる。
実はそれぞれ 黄色 赤 青の分量が異なっているそう。
ん~ 分からない。
この3つを重ね合わせ その人だけの世界に一つだけの色を表現する。
この日 福島は東京に出張していた。
お疲れさまです。
大阪まで来られないお客のために
4年前 東京に工房を立ち上げた。
客はリピーターがほとんど。
メンテナンスしながら福島の人工ボディを使い続けている。
この日やって来たエミさんも
常連客の一人。
20代前半の頃 事故で人さし指を失った。
事故後はショックから誰とも会いたがらなかったというが→
今では そんなそぶりさえ見せない。
この日は新しい付け爪が人工ボディになじまず→
その調整に訪れていた。
人工ボディに付け爪をつけられるようにしたのは→
オシャレなエミさんのために
福島が編み出した技術だ。
福島は どんなささいな要求にも
徹底的に応える。
福島がよみがえらせるのは
体だけではない。
時に 人生も変える。
(福島)すご~い。
堀さんは 10歳の時 骨肉腫で

左足の付け根から先を失った。
義足を見られることが嫌で
長年 足の露出を避けてきた。
だが 福島の人工ボディと出会ってから
左足を堂々と出し→
今は海外旅行が趣味に変わった。
そんな堀さんのために→
福島は 長時間の歩行に耐えられる
人工ボディを作り上げた。
(福島)あ~ よかった。
体だけではなくその人の心も支えたいという福島。
一つの信念があった。
その福島の信念は確実に 笑顔につながっている。
作っていたのは 大学病院で
プレゼンするための資料。
人工ボディの ほとんどは
保険が適用されず 自己負担が大きい。
そこで福島さんは→
人工ボディが普及するための環境づくりに奔走している。
福島さんを突き動かすもの。
それは 苦しみもがいた20代の体験にある。
福島さんが ものづくりの道を志したのは
工芸高校時代。
デザインや造形をすることが
大好きだった。
人工ボディ技師としての
スタートは 21歳の時。
「欠損した体の一部を復元する」。
そんな求人広告にひかれその会社に入社した。
しかし 入ってみると

技術者は 福島さん ただ一人。
作り方は 自分で考えるように言われた。
お客が来ても 「これは できない」と断ることも しばしばだった。
2年が過ぎた頃 事件が起きた。
社長が失踪した。
かねてからの借金が膨らみ
経営が行き詰まっていた。
お客からは 「障害者を食い物にした
詐欺だ」と詰め寄られた。
社員は 次々と辞めていった。
残ったのは 福島さんだけだった。
福島さんは 覚悟を決めて
どんな依頼にも 真正面から向き合った。
硬さが気に食わないと言われれば
全国からシリコンを集め→
何度も何度もテストを繰り返した。
肌の色を乳製飲料と同じにしてほしいと言われれば→
それを一晩中 眺めながら
色を作り出した。
う~ん… わあ ちょっと ほんとダメだ。