2018/12/02(日) 21:00〜21:50 NHKスペシャル 平成史 第2回「バブル 終わらない清算〜山一証券破綻の深層」[字]
史上最高値を更新し→
3万8,000円を超えた。
国も 株価や地価を下支えする政策を打ち出す中で→
日本全体が 空前の繁栄を享受していた。
山一証券は この年の年度末に→
過去最高 5,735億円の営業収益をあげた。
法人営業が専門の事業法人部→
通称 事法に所属していた→
正富芳信 57歳。
事法は 企業から多額の資金を集め
運用する 花形部署。
営業収益の多くを稼ぎ出していた。
財テクに熱を上げる企業から資金を預かり→
一人で 1,000億円を超える金を
動かすこともあったという。
バブル期に経営を担った 社長の訓示を
記録した音声が残されていた。
山一のドンと呼ばれた行平次雄。
後に 商法違反などの罪で→
起訴されることになる。
全ては 株価が上がり続けるということを前提とした→
かりそめの うたげだった。
きんは 100歳 100歳。
ぎんも 100歳 100歳。
きんさん ぎんさんがCMに登場し人気を博した平成3年。
時代は 暗転する。
「株価急落の中でも損をしていなかった投資家たちの存在が→
明らかになりました」。
証券会社が企業の抱えた多額の損失を穴埋めする→
損失補填が発覚したのだ。
バブル期 証券会社は企業に高い利回りを保証し→
巨額の資金を集め 運用していた。
株価が上がり続ける限り→
企業も証券会社も→
利益をあげることができた。
しかし 株価が下がると→
大きな損失が発生する。
実際に 90年代初頭から 株価は急落。
利回りを保証し資金を集めていた証券会社は→
大企業との関係を維持するために
その損失を補填していたのだ。
その額は
四大証券だけで 1,700億円を超えた。
監督官庁のトップ 橋本大蔵大臣は→
損失補填を禁止する法改正を行った上で 辞任した。
山一の社長 行平は→
損失補填が禁止されることを受けこう明言した。
しかし これは 偽りの会見だった。
公表した損失補填とは別に企業側に穴埋めを迫られていた→
1,200億円もの損失を
隠蔽し続けていたのである。
危機から目を背け→
問題を先送りしていく山一の経営陣。
今回 私たちは→
ある社員が記録していた文書を独自に入手した。
そこには 副社長から
隠蔽を指示された時の会話が→
赤裸々に つづられていた。
「どうしても当社が被らなければならない損失は→
どこか目の届くところに固めて→
暫くプールすることを考えなくてはなるまい」。
「何か うまい方法を
考えてくれないか」。
「その後の処理については→
とにかく 今の混乱状態を乗り切ってから考えようや」。
この社員を中心に→
隠蔽を行う極秘チームが編成されていたことが分かった。
社員の名は 木下公明。
東大法学部出身で→
専門的な法務の知識を持っていた。
木下が考え出したのは損失を別会社に移し替える→
飛ばしと呼ばれる会計上の手法を
更に複雑にしたものだった。
莫大な損失を細かく分け→
複数のペーパーカンパニーに引き取らせる。
一つの会社の負債が
200億円未満だった場合→
会計監査の対象にならないという
法律の盲点を利用した。
更に 決算期のずれを利用して→
その損失を 次々と→
別のペーパーカンパニーに移し替え→
発覚を逃れるという悪質な手法だった。
隠蔽の手口を考案した
木下公明は 現在82歳。
罪の意識から口を閉ざしてきたが→
顔を撮影しないことを条件に初めて取材に応じた。
会社のために 上司から命じられた不正に
手を染めたと明かした。
当時 55歳の木下は→
社内の出世コースから外れ早期退職を考えていた。
この命令に従えば
日の目を見られるという考えが→
ちらついたという。
この時から破綻まで6年。
目先のリスクにとらわれ→
その先にある 更に大きな危機を見通そうとする者は→
誰もいなかった。
<バブルが崩壊した1990年代。→
それは 次々と起きる危機に