2018/12/15(土) 16:15〜17:05 NHKスペシャル選「沢木耕太郎 アマゾン思索紀行〜隔絶された人々 イゾラド〜」[字]

♪♪~
(朗読・役所広司)
不思議な話を聞いたのだ。
ある時 アマゾンのジャングルから
二人の裸の男が 姿を現した。
だが 彼らの話す言葉は
まったく 分からなかった。
どこから来たのか。
仲間がいるのか いないのか。
何一つ 分からなかった。
二人は まさに 忽然と現れたのだ。
二人は 何者なのか。
私は 不思議な二人の その話に導かれるようにして→
雨季のアマゾンに 降り立った。
二人についての情報は「フナイ」という政府機関にあった。
フナイは「ブラジルに 30万人いる」
という 先住民族のために→
土地を確定し
保護区の管理などを行っている。
1987年 フナイに
アマゾンの開拓民から→
「森の中に 素っ裸の男が いるから
追い出してくれ」との→
通報が入った。 森を探索した
フナイの職員は そこで→
不意に 裸の二人と 出くわした。
二人は 住居らしい小屋に職員を招き入れると→
丸ごと茹でただけのカメを
食べろと 差し出してきた。
その時の様子が


カセットテープに録音されていた。
(録音された 二人の会話)
二人の話す言葉には不思議な抑揚があった。
しかし それは誰にも理解できない
まったく未知の言語だった。
アマゾンには 依然として→
現代文明と接触したことのない先住民がいるのだという。
ブラジルでは 彼らのことを→
「イゾラド」…「隔絶された人々」と呼んでいる。
イゾラド。
彼らが生きている世界とは?アマゾンの奥深く→
私は 「イゾラドへの旅」を
始めることにした。
♪♪~
南米大陸を貫く アマゾン川は→
支流まで含めると
地球を一周するより 長い。
私は その支流の一つをさかのぼり
「ジャバリ」という地域に向かった。
ジャバリの森の奥には→
今なお 1,000人以上のイゾラドがいるという。
「イゾラド」とは→
先住民の中でも いまだ文明社会と接触していない部族をいう。
ジャバリには 文明社会が
最も近年に接触した→
イゾラドの部族が住んでいる。
「コルボ」と呼ばれる20人余りの 小さな集団だ。
政府機関のフナイは
彼らを保護するため→
ジャバリに 前線基地を造った。


指揮官の名は→
「シドニー・ポスエロ」といい
数十人の部下を率い→
ジャバリ一帯を
武力で封鎖しているという。
国境の町から アマゾンを
さかのぼること 2日。
(沢木耕太郎)あれですかね?
その前線基地が見えてきた。
基地の桟橋には 珍しい飾りを
つけた 先住民の姿もあった。
基地の仕事を手伝いに来ている
マチス族のようだ。
顔中に ヒゲを生やした初老の男が
シドニー・ポスエロだった。
かつて フナイの総裁まで
のぼりつめたが→
退任後 志願して 再び
ジャングルの現場に戻ったという。
ポスエロは 政府を動かし→
ジャバリ一帯を先住民族保護区とした。
その結果 地域の住民は 一切の
出入りを禁じられることになった。
奥地へ向かう 文明社会と→
以前からそこに住んでいた イゾラド。
両者の対立と抗争が この地では
依然として 続いている。
1991年 コルボの男3人の
射殺死体が見つかった。
殺したのは

地域の住民たちだった。
2000年には 逆に 3人の漁民が
頭を たたき割られて 殺された。
現場には 凶器と思われる
6本の長い棒が落ちていた。
その棒は
コルボが 護身用の武器として→
常に 携えているものだった。
血なまぐさい争いを防ぐためポスエロは封鎖に踏み切ったのだ。
コルボの健康管理を担っている