2018/12/16(日) 15:05〜15:55 NHKスペシャル選 大アマゾン最後の秘境(2)ガリンペイロ黄金を求める男たち[SS][字]


絶望的な言葉を吐き続けた。
本当に出ていくつもりなのか。
舟のエンジンを持ち出し船着き場に向かった。
黄金がとれない時間が長くなると

自暴自棄になる者が増えるという。
だが 結局
男は ここを出ていかなかった。
ポンタと呼ばれる男は
金鉱山で生まれ 金鉱山で育った。
ポンタが家族だと言ったのは


白アリの巣だった。
ガリンペイロだった父も
金鉱山を転々としていた母も→
既に この世には いなかった。
ほかに行く当てなどポンタにはなかったのだ。
その夜 酒に酔ったポンタが
いさかいを起こした。
年下のガリンペイロから
バカにされた事がきっかけだった。
この一年で
2人が銃で死んでいる。
ヤバイ ヤバイ ヤバイ!
ちょっと 撃つ 撃つぞ。
待つ時間に
耐えられなくなってもなお→
ポンタは ここで
生きていかねばならなかった。
両手いっぱいの黄金を手にして
ここから出ていく。
ガリンペイロが抱く夢を→
ポンタは いつまで持ち続ける事ができたのだろうか。
ゴールドラッシュが起きる度に→
アマゾンには無数の男たちがやって来る。
しかし その夢をかなえた者は
ほとんどいない。
黄金の悪魔に 「あの若造が
また掘り始めた」と聞いた。
場所を教えられ
森の中を探したが→
人けのない小屋が

立ち並んでいるだけだった。
だが しばらくして
見覚えのある顔が近づいてきた。
2週間ほど前に姿を消した
あのラップ好きの若者だった。
(取材者)どうして ここにいる?
(ほえ声)
若者が掘っていたのは→
黄金の出が悪いため長く放置されていた場所だった。
ほかのガリンペイロが
見向きもしない土地を一人で掘る。
若者は なぜ また戻ってきたのか。
いくら聞いても曖昧な答えしか返ってこなかった。
若者は そう言うと→
虫が掘った穴を黙って見続けていた。
♪♪~
そして 最後に こう言ったのだ。
「食っていくために
掘るんじゃない」。
だとすれば
一体 何のために掘るのか。
♪♪~
翌朝 若者は 夜明け前に起きた。
そして 何かに取りつかれたように
一人 森でラップを歌った。
♪♪~
惨めな過去への決別なのか。
何者かになるための覚悟なのか。
ここは お前らの知らない世界。
ここに 俺の名を刻んでやる。

秘密の金鉱山での最後の日曜日が来た。
いつもの休日と同じように
ガリンペイロたちは 朝から飲んでいた。
ガリンペイロの一人が私たちを誘った。
捕まえてきた動物をさばくから一緒に食べようというのだ。
10代半ばから ここで黄金を探す→
マカクという名の口数の少ない男だった。
マカクは 母親が
ゴミ箱に捨てた孤児だった。
仲間のために
マカクが動物をさばき始めた。
生みの母親には会った事もないし
会いたくもない。
ゴミ箱に捨てられた男が
捕ってきた動物は メスだった。
腹の中には 胎児がいた。
胎児には 一瞥もくれず マカクはただ「捨ててきてくれ」と言った。
胎児が捨てられたのは→
かつては 穴だった森の中のゴミ捨て場だった。
マカクは言った。
「俺には天国に持っていく物なんて何もない」。
「俺が死んだら
ここに埋めてほしい。→
俺にとって 天国は ここなんだ」。
♪♪~
その夜 マカクが仲間と飲んでいた。
♪♪~
ここは 本当に天国なのか。
それとも 行き場のない者が集まる吹きだまりなのか。
その答えが どうであれ→