2018/12/16(日) 21:10〜21:59 NHKスペシャル「アウラ 未知のイゾラド 最後のひとり」[字]


2人は マットを剥がして床に敷き寄り添うように眠った。
すぐに アウレの容体が悪化し
大きな病院に移されることになった。
アウラは そこにも付き添った。

末期がんだった。
三日月の夜 アウレが死んだ。
動かなくなってしまったアウレを→
アウラは
ただ じっと見つめていたという。
ノルバウがやって来た時


アウラが言った。
アウレ オッキン。
アウレが 死んだ。
それ以降 アウレのことは
ひと言も語っていない。
夜のことだった。
アウラが保健所にやって来た。
遅い時間に来るのは珍しいことだった。
食事を終えたらすぐに小屋に戻るのだろう。
職員たちは そう思っていた。
(話し声)
だが 何かを語りだして
止まらなくなった。
看護師や政府の職員には
アウラの言葉は分からない。
話が終わるまで 聞いているふりをして
相手をするしかない。
テーブルに 一人になっても
アウラの話は終わらない。
じきに 耳を傾けようとする者は
いなくなっていた。
3時間以上しゃべり続けて
アウラは 小屋に戻った。
煙 森 火花 大きな音 ふたり 子ども。
分かった単語は それだけだった。
♪♪~
ノルバウによればアウレが死んだ6年前から→
アウラは 変わったという。
ほかの部族との暮らしを受け入れノルバウと話す時間も ずっと増えた。
♪♪~

突然 家にやって来て一方的に話す夜もあった。
やり取りを重ねるうち→
ノルバウは アウラがある単語を発する度に→
悲しく 苦しそうな表情をすることに
気が付いた。
それは この3つの言葉だった。
どう使い分けているかは不明だが→
全て 消えること あるいは
死を意味する言葉だと解釈した。
しかも…。
死を意味する単語のあとには→
部族に起きたことを連想させる言葉が
続いて出てくるという。
それを話してもらえないか
ノルバウを通じて そう頼んだ。
矢で殺されたというなら
アウラの部族を襲ったのは→
ほかの先住民かもしれない。
ところが…。
これは 誰のことなのか。
髭のあるカライー。
つまり 先住民以外の人間ではないのか。
どちらが殺したと言いたかったのか。
その場所は かつて 原初の森だった。
だが 1970年から 森を切り開く巨大プロジェクトが始まった。
10万人が殺到したという
ゴールドラッシュも起きた。
世界最大の鉄鉱山が見つかり
鉄道も敷かれた。
森が狭まっていく過程で

何が起きたのか。
先住民同士の争いか。
文明側の侵入者による殺戮か。
だが もちろん 公文書には
何一つ 書かれてはいない。
ただ 「発見された時には
2人しかいなかった」とあるだけだ。
今 アウラが暮らす場所から
西へ1,000km。
2人の小屋があったという森を目指す。
なかなか 森にたどりつけない。
ここだと思った道も
採掘業者によって分断されていた。
ようやく見つかった森は
牧場になっていた。
30年前 ここに
アウラとアウレの小屋があった。
それ以前であれば 部族の人たちも
一緒に暮らしていたかもしれない。
あの森で 何があり
なぜ 2人きりになったのか。
いくら 耳を澄ませても 800の単語しか
こちら側には届かない。
(雷の音)
もしかしたら それは雨の夜だったのではないか。
弓矢で襲われ
血が飛び散ったのではないか。
髭を生やしたカライーが
大きなカヌーでやって来たのではないか。
大きな音と火花