2019/01/13(日) 21:00〜21:50 NHKスペシャル 東京ミラクル 第1集「美食の街 受け継がれる“築地の魂”」[字]
例えば 魚の下処理。
この日は 新しい血抜きの技術が
開発されたと聞き 訪ねていました。
臭みのもとになる血を
完璧に洗い流せれば→
魚が更においしくなるのではないかと
検討していました。
そうしたいと思っています。
日本全国から集まる魚は仲卸 料理人とリレーされるに従い→
食べる人に向け
更においしさを増していきます。
そのリレーが途切れた時代がありました。
終戦直後です。
3か月間で 1,000人以上の餓死者が
出るほどの食糧難にあえいだ東京。
それでも 築地は
そのリレーをつなごうとしました。
じいちゃん。
この傷がさ 今でも痛むことってあるの?
痛かねえよ。
部隊は全滅したのに俺だけ こんな傷で助かった。
運がよかったよ。
傷なんかよりさ腹が減るのが つらかった。
国に帰れたら
うまいものを たらふく食いたい。
あっちじゃ
そればかり考えてたな。
じいちゃんが
人生で一番うまかった食い物って何?
玉壽司の握り寿司だね。
昭和23年だった。
あの味だけは忘れられねえよ。
ご主人を亡くしたことさんっていう女の人が握っていてね。
当時は 今以上に
女が寿司を握るっていうのは珍しかった。
ねえ あっちも行こうよ。
ああ 行こう 行こう。
玉壽司って どこにあったの?
市場が移転しちまった築地さ。
あのころは築地に行けば
うまいものに ありつけた。
築地か。
もう跡形もないな。
ああ もういっぺん食いたいな。
ねえ これ えっ どうやってやるの?いや 分かんないよ。
ちょっと ああっ! ちょっと!
ここは 一体 どこなんだ?
廃墟の街。
悪い夢でも見てるのか?
おい 冗談だろ。
腹をすかせた人たちが取りつかれたように食っている。
どうやら俺は 戦後間もない築地に
タイムスリップしたらしい。
築地は 終戦直後
その機能を失いました。
空襲こそ免れましたが
建物はGHQに接収され→
連合国軍兵士のための
クリーニング工場として使われました。
しかし 築地には おなかをすかせた
人たちが集まり続けました。
市場はなくなっても
漁師たちは 東京湾に面した築地に→
魚を水揚げしていたのです。
「東京・築地の魚市場に 千葉県銚子から油と引き換えに到着した→
1万2,000がんの いわしです」。
魚をかき集めていたのは築地で働いていた職人たちです。
当時は 魚も統制品。
配給は満足にありませんでした。
職人たちは 築地魂を発揮。
違法といわれようと 独自のルートで魚を人々に届けようとしたのです。
飲食店の営業も禁止されていましたが→
闇営業の寿司 丼などバラック作りの店や屋台が並びました。
築地は 東京の飢えを満たしてくれる
場所だったのです。
ああ ごめんなさい。 お待たせしたわね。
はい どうぞ入って。
はい 久しぶり。
はい。
ごめんよ。
玉壽司って…。
じいちゃんの言ってた玉壽司か。
はい。
わざわざお米を持ってくの?
米1合を持参して加工賃 100円払うと→
握り寿司10貫に ありつけた。
魚が思うように手に入らず→
きゅうりや たくあんを握る寿司が
広がったのも このころといわれています。
はい。
まるで宝石だ。
近頃 ようやく
魚が手に入るようになったのに→
今夜に限って ごめんなさいね。
かぶだって うめえよ。アッハハハハハ!
なあ。
いらっしゃい。
見ない顔ね。
あの ひょっとして ことさんですか?
中野里ことは 私よ。