2019/02/11(月) 22:00〜22:45 プロフェッショナル 仕事の流儀「この一貫に、心を尽くす〜すし職人・天野功〜」[解][字]

♪♪~
言葉を失う すしがある。
甘い脂が だしとともにとろけ出すマグロ。
九州 響灘 とれたてのタイには
濃厚な肝を添えて。
この すしのために全国から客は集う。
九州に この男ありといわれるすし職人。
シンプルさを追求する 握り。
その中で天野のすしは異彩を放つ。
この冬一番の 極上ネタ。
途方もない情熱を 一貫に懸ける。
小さなすし屋の 頑固親父。
その勝負に 密着。
朝6時半。
すし職人 天野 功は仕込みを始める。
(かしわ手)
その段取りや手順はここ十数年 変えていないという。
ハハハハ…。
シャリを作るのも 天野自身。
先代である親から受け継いだ
甘めの味を今も守る。
天野が店を構えるのは 九州の玄関口…
日本海や瀬戸内海に囲まれ一年中 新鮮な魚介が集まる。
ここから 天野の手によって
他にはない 独創的なすしが生まれる。
昼12時。
開店とともに予約客がやって来た。
席は カウンター5席のみ。
酒や つまみは一切出さずメニューはお任せの15貫だけだ。
まず最初に…


脂の甘さを 塩だけで味わってもらう。
江戸前ずしには 日本料理の特徴である→
引き算の思想が色濃く反映されている。
素材の持ち味を存分に引き出すために
極力 手は加えず→
そぎ落としていく技法だ。
だが 天野は邪道と言われようともそこに とどまらない。
2貫目のイカ。
(天野)ありがとうございます。
目の前の海でとれたばかりのイカに
飾り包丁を入れ→
食感を引き出す。
そこに なんと ウニ トビウオの卵。
さらにカボス 塩 サンショウの芽
仕上げは七色のゴマ。
ただでさえ極上のイカ。
だが あえて他の素材を緻密な計算のもと 足すことで→
甘みと食感を さらに引き立てた。
半茹でのエビには爽やかなカボスと塩を。
しめ鯖は 炙った脂のうまみに
甘酢ミョウガと昆布を足した。
中盤の山場は マグロの漬けだ。
ここにも 常識破りの天野の足し算がある。
マグロの風味を より強めるために
なんと漬けじょうゆに→
マグロ節からとった だしを加えている。
漬けは 傷みやすい だしは用いないことが多い。
だが 形にとらわれない天野は
この足し算に踏み切った。
素材を生かすために


常識破りともいえる技法を駆使し→
完成された料理にまで高める。
それが 天野の九州前。
生み出すのは 驚きと 喜び。
すし職人という仕事への一つの向き合い方がある。
ありがとうございました。
(天野)こちらこそ。
また一人 客が笑顔で店を後にした。
♪♪~
天野さんの店には
海外からのお客も急増している。
この日の家族は 遠くメキシコから。
母親の疲れを見て取った天野さんは…。
精いっぱいの英語で もてなした。
実は 60歳になった数年前から英会話の教室に通っている。
どうやったら お客に楽しんでもらえるか。
だから…
天野さんは 前のめりに質問をする。
さらに 英会話が終わると 次の稽古へ。
もてなしの神髄 茶道。
ここでは 名すし職人も こわごわ。
でも この所作の一つ一つが→
店での振る舞いに生きると考えている。
(笑い声)
冬の初め。
天野が待ち望んでいたネタが届いた。
旬を迎えたサワラ。
中でも 最高級の一匹だという。
送り主は 地元 北九州の漁師…
徹底した血抜きの処理を磨いた名人。

とった魚の血をその場で極限まで抜く技術だ。
天野は 初めて仕入れた その魚に
目をみはった。
サワラ独特の臭みが一切なく
驚くほどの質の高さだった。
天野は この特別なサワラならば
新境地がひらけると考えた。
3日後 天野は寝かせて うまみを
さらに引き出したサワラを客に出す。
カボスと塩だけをふり 勝負する。