2019/03/10(日) 21:00〜21:55 NHKスペシャル「終(つい)の住みかと言うけれど…〜取り残される被災者〜」[字]


明確な喪失に変わるといいます。
今 仮設住宅に暮らす福島の人々も
明確な喪失に直面しようとしています。
南相馬市最大の仮設住宅では→
この8年 毎朝みんなで体操をするのが日課でした。
妻に先立たれ
一人で暮らしてきた佐々木清明さん。
毎日 体操には欠かさず参加してきました。

仲間に支えられてきた佐々木さんの暮らしも→
今月 終わりを迎えます。
仮設住宅の無償提供が打ち切られ閉鎖されるからです。
仮設住宅を
出ざるをえなくなった佐々木さん。
災害公営住宅に入る道もありましたが→
先祖代々の土地を守るため自宅に戻ることを決めました。
佐々木さんは
集落の人たちとの思い出の写真を→
大切に持っています。
地域のつながりも強くどんな時も助け合っていました。
しかし…。


(取材者)ここに うち いっぱいあったんですか?
周囲は
除染廃棄物の仮置き場になっていました。
この集落で帰還した人は
1割ほどしかいません。
ここに 一人で住み続けられるのか。
変わり果てた ふるさとの姿を前に気持ちが揺らぎ始めました。
変わり果てた ふるさとに
住み続けることで→
心身ともに追い込まれる人も
出てきています。
2年前に避難指示が解除された
飯舘村。
村の居住率は 2割ほどです。
自宅に家族と戻ってきて1年になる50代の男性。
医師からは アルコール依存症と
診断されています。
この男性は 震災前は
集落の人々と米作りをし→
兼業農家として生計を立てていました。
しかし 避難先で生きがいを失い酒を飲む量が増え→
アルコール依存症の治療を受けました。
その後 症状が緩和し ふるさとに帰還。
男性を待っていたのは
想像とは全く異なる現実でした。
農業再開のめども立たず
再び 酒に手を出すようになった男性。
次第に家族の中でも孤立していきました。
こんにちは。
寝てたんですか。

今 この男性はNPOによる訪問支援を受けています。
依存症の治療を行う
医療機関と連携する このNPOは→
週に2回ほど
体調の管理などをしています。
男性の気持ちに寄り添い
心のケアも行っていきます。
男性を
同じ境遇で悩む人々の集いに誘いました。
人と交流することで 生きる意欲を
取り戻してもらおうとしています。
あいまいな喪失が
明確な喪失へと変わった瞬間→
人々は もう一度 深刻なダメージと
向き合うことになります。
それに一人で打ち勝てというのは
酷な話です。
バラバラになりそうなコミュニティーを
なんとか つなぎ止め→
なりわいが成立する仕組みを
構築するという→
長くて 困難な道のりは
これからが本番なのです。
あの日から8年がたち→
被災者という言葉でくくるのが難しいほど被災した人たちが抱える問題は→
多様化 細分化しています。
加えて 復興政策のレールから外れた人たちの暮らしは→
より深刻の度合いを増している現状も
浮かび上がってきました。
従来の制度による支援が

限界に近づく中で→
苦しむ人たちの個々の問題に
どう向き合い→
生活再建の軌道に乗せていくべきなのか。
宮城県石巻市にあるボランティア団体の取り組みに→
ヒントを探りました。
壊れたままの家に住む在宅被災者を支援する「チーム王冠」。
代表の伊藤健哉さんは→
今 およそ500世帯の相談に乗っています。
被災者が抱える課題が多様化する中→
伊藤さんは さまざまな専門家集団と連携するようになりました。
家の修理について相談に乗るのは
建築士です。
法律上のトラブルや行政との折衝は
弁護士。
これら専門家は 無償で協力しています。
このほかにも 医療や福祉の機関→
就労支援や心のケアに関わるNPOなど→
15を超える団体がネットワークを形成。
専門家が連携し