2019/05/07(火) 22:30〜23:20 プロフェッショナル 仕事の流儀「我流、肉道〜精肉店店主・新保吉伸〜」[解][字]
新保さんのようにこの手法を認めてくれる人がいることで→
経営は成り立っている。
「格付けでは評価されない牛肉の価値を引き出したい」。
その思いは 更に強くなっている。
この日 訪れたのは肉牛ですらない酪農牛を育てる農家。
年をとり 満足な乳を出せなくなった
酪農牛は→
キロ数百円という安値で処分される。
行き着く先は ひき肉やペットフード。
新保さんは そうした牛さえも
進んで引き取ってきた。
手当てと熟成を重ね
二束三文の酪農牛を→
ミルクの香りが立ち上る
特別な食材へと再生させた。
今や 料理人の間では
A5の霜降りよりも希少価値が高い。
♪♪~
♪♪~
(取材者)きれいですよね 景色が。
新保は 高層マンションの一室にある料理教室を訪れていた。
授業で新保の手がける肉を使いたいという
申し出を受け→
滋賀から上京した。
実は 新保のもとにはその肉を使いたいと→
星つきのレストランをはじめ
年間300軒以上もの依頼がある。
だが 今は 熟成肉の扱いについて
正しい知識があると認めた→
40軒の店だけにしか卸していない。
新規の依頼者には 直接会いその腕や人柄を自らの目で見定める。
遠慮は一切ない。
腕は確か。
新保は 更に
自分の肉を使う目的を問い始めた。
そのさなか 気になる要望が出てきた。
料理家は 新保が扱う肉の中でも→
豚は流通の少ない
希少品種に限って使用し→
教室の売りにしたいという。
料理人として肉の個性と向き合える人物か。
新保は 肉が食される最後まで責任を持つ。
この日だけでは決断に至らず話し合いを続けていくことになった。
うわ 難しいな… 難しい それは。
う~ん… こうやって→
しゃべってるのが 100なんで…
思ってますね。
この日も 新保さんは
取り引きを願い出たシェフに会うため→
北海道 帯広までやって来た。
事前連絡は一切なしの抜き打ち。
この日も ずけずけと切り込む。
質問攻めの相手はシェフだけに とどまらない。
過剰なまでに腹を割ったつきあいを
相手に求める新保さん。
このスタイルに至ったのには
深い訳がある。
精肉店を営む家に生まれた新保さんは→
高校を卒業すると父の後を追い下積みを始めた。
26歳で独立。
和牛ブームの波に乗り肉を買い 売りまくった。
競りでは常に サシがたっぷり入った
A5ランクの肉を→
最高値で落札する有名人。
やり手のお肉屋さんとして 30代半ばで契約業者は500軒を超えた。
だが 40歳の時
業界を揺るがす大騒動が起きた。
BSE いわゆる狂牛病だ。
日本国内でも牛への感染が確認されたことで→
牛肉の安全性が大きく揺らいだ。
当初 新保さんは楽観視していたが半年を過ぎた頃から売り上げが激減した。
苦境になるほど
常連客は店に姿を見せなくなり→
昨日まで談笑していた取引先が
前触れもなく契約を打ち切っていく。
500軒の取引先が3年でゼロになった。
自分が築き上げてきたものは何だったのか。
ただ むなしかった。
残ったのは 3,000万円の借金。
新保さんは再起を懸け
意外な手に打って出た。
当時は まだ珍しかった
インターネットを使ったPR。
ホームページを手作りし
全国の卸業者と生産者に→
取り引きを呼びかけた。
ある日 ホームページを見たという一人の女性から→
手紙が届いた。
西川奈緒子さん。
北海道の山奥で牛を育てていた。
話だけでもと訪ねた新保さんは目の前の光景にくぎづけになった。
行われていたのは
日本では類を見ない規模の完全放牧。
野生の状態で育てることで
牛のストレスを極限まで減らす→
牛本位の育て方。
広大な敷地を見回り一頭一頭を育てる手間は計り知れない。
だが 野生の草しか食べていないため
サシのある霜降りには ならない。
安値で買いたたかれ