2019/09/03(火) 22:30〜23:20 プロフェッショナル 仕事の流儀▽その人らしさを見つめて 認知症ケアのプロSP[解][字]


加藤が心に刻んだ決意がある。
何とか送迎の車は確保できた。
一人一人の思いも支える介護。
その加藤さんの信念は

過去の苦い経験から生まれた。
加藤さんは大学卒業後→
入所者が100人という 大規模な特別養護老人ホームで働き始めた。
そこで今も忘れられない出来事があった。
ある春の日。 お年寄りたちと花見に外に出たいと 施設長に願い出た。
すると思いも寄らない答えが返ってきた。


加藤さんは 決心した。
「自分の信じる介護ができる
介護施設をつくる」。
職場の先輩で妻の律子さんと
介護施設を立ち上げた。
加藤さん 25歳の時だった。
デイサービスに加藤が気にする利用者がいた。
8年前
アルツハイマー型認知症と診断された。
この施設に来たのは2年前。
それまでは 宮城県で長女の家族と暮らしていたが→
長男がいる
ここ 藤沢市に引っ越してきた。
加藤が気になっていたのは
スタッフとの関わりだった。
明さんは スタッフリーダーの
小池さんには 心を開いている。
ところが 他のスタッフとなると
当たりがきつくなる。
ふん。
ふん。
おいしい。
うまくねえよ。
どのスタッフでも 同じように
向き合えなければ この施設の意味がない。
加藤は リーダーの小池さんに
自分の危機感を伝えた。
現場のスタッフが 動きだした。
いろいろと言葉をかけ気持ちが変化するよう導いていく。
(笑い声)

この日 一通の手紙が届いた。
明さんのことを教えてほしいと→
小池さんが長女に送った手紙の返事だった。
手紙には 家族でしか知りえない
明さんのことが記されていた。
「父は へそ曲がりなところは昔からあり→
嫌がるのを面白がるようなことはあったと思います」。
「父は まめな人で
ず~っと日記をつけていました。→
次第に書くことが少なくなり 時折→
『今日は大きな声を出したようだ。申し訳なかった』→
『頭がおかしくなったようだ。 なんなんだ』
と書いた時もありました」。
「父は陽気な人でした。
人と話すのも好きです。→
仕事も生き生きと取り組んでいました」。
「あまのじゃくな返事は父の残念なところですが→
父なりのコミュニケーションの
とり方と思って→
懲りずに話しかけてやって下さい」。
加藤は スタッフみんなで手紙の内容を共有した。
仕事が好きだった明さんに 頼み事をする。
明さんのために 何が正解なのかは分からない。
心を動かしながら
介護の日々は 続いていく。
あまたのお年寄りと向き合ってきた
加藤さんに 強い印象を残した人がいる。
ふすまや屏風を仕立てる職人だった
重田正明さん 愛称シゲさん。
認知症になったが 昔とった きねづかで

次々に施設の棚を作ってくれた。
でも 89歳で すい臓がんを発症。
食事ができなくなり日に日に痩せていった。
それでも 父のいないスタッフの女性の
結婚式では→
妻の不幸の直後にもかかわらず
父親役をつとめあげた。
「余命2週間」。 医師から言われた頃
思わぬ願いを言葉にした。
何かが起きても 不思議ではない。
けれど 加藤さんは 迷わず送り出した。
大好きな温泉を堪能。
すっかり食べられなくなっていたシゲさんが→
この夜は 全ての皿に箸をつけ
ビールまでおいしそうに飲んだ。
でも帰りの道中 付き添ったスタッフに
語ったのは 意外な言葉だった。
加藤さんには 進むべき道を示してくれる
「北極星」のような人がいるという。
丹野智文さん 45歳。
6年前 39歳の若さでアルツハイマー型認知症と診断された。
大きな不安に襲われながらも
病気を隠さず→
他の認知症の人たちの相談に乗ってきた。
2年前 加藤は新たな施設をつくった。
その名も…
これも 力を入れている小規模多機能型。だが 斬新な試みがある。
調理担当は 鎌倉の料亭で働いていた板前。
栄養たっぷりの総菜は食べ放題。
毎朝 漁港から仕入れてくる魚は