2020/02/04(火) 22:30〜23:20 プロフェッショナル 仕事の流儀「虐待・貧困支援 高橋亜美」[解][字]

最新事情に迫ります。
子どものころ受けた虐待の傷に
大人になってなお 苛まれる人。
その傍らに寄り添う人がいる。
虐待を受けた人々の「その後」の人生を支える→
アフターケアの第一人者。
高橋の自宅は 活動の拠点を置く東京から270キロ離れた 岐阜城の麓にある。
高橋は 2人の子どものお母さん。
長男を保育園に行かせるのに てこずりタクシーで 急ぎ岐阜駅へ。
ここから東京まで 2時間10分。
往復に5時間費やすが 子育ては自らが育った岐阜ですると決めている。
高橋が所長を務める相談所は
東京 国分寺にある。
スタッフは6名。
自治体からの補助金や寄付金で運営している。
ここには
年間3万件を超える相談が寄せられる。
その多くが 子どものころ
虐待されていた人からの相談。
児童養護施設などにいたころは
生活が保障されていたが→
大人になり 退所したあと→
彼らを さまざまな困難が待ち受けていることは あまり知られていない。
虐待のトラウマで精神疾患などを発症。
親や家族にも頼れず 孤独に苛まれ自殺に追い込まれる人もいる。
高橋は
そうした人の相談に乗るだけでなく→
役所や病院に付き添うなど
自立に必要な支援を行う。
費用は 無料。


これまで 1,000人の相談に乗ってきたパイオニアだ。
1件の相談が舞い込んだ。
相談者は幼いころ 虐待を受けていた女性。
トラウマがあり 見知らぬ人との接触は
難しいため 音声のみ取材が許された。
緊張の色が見える相談者に 高橋は
友だちのような態度で接していく。
支援者・高橋亜美の向き合い方。
女性は 父親から顔や体を殴られる虐待を日常的に受けてきたという。
家を離れ 働き始めたものの→
虐待からくる対人恐怖症に苦しみ仕事を辞めざるをえなかった。
現在は 痛みを伴う難病を患っており
生活もままならない状況にあった。
相談は 引っ越しについて。
女性に費用を捻出する余裕はなく行政の支援を仰ぎたいが→
対人恐怖症がひどく
窓口での手続きができずにいるという。
国は 貧困やDVなど
さまざまな困難に直面する人に→
セーフティーネットを設けている。
だが この女性のように窓口に行くことが困難な人もいれば→
そもそも
どんな支援があるか知らない人もいる。
面会後 女性から届いたのは
安堵の言葉だった。
「ほんとうに ありがとうございました!」
とかが 明るいメッセージじゃない?
ビックリマークとか笑顔のマークとかが→
入ってるのが うれしい。
実際に住まいの様子を確かめた高橋は


女性とともに役所を訪ねた。
それまで言葉少なだった女性が
訴え始めた。
担当者の対応が 変わり始めた。
病気を証明する資料を用意すれば→
最短で1週間以内に
会議にかけると約束した。
女性が インタビューに応じた。
その後 役所から支援を得られることになり 転居のめどがついた。
通常の支援は ここで終わり。
だが高橋は 違った。
役所を訪ねてから2週間。
女性のアパートを訪ねた。
相談されたことをかなえれば
それでさようなら。
そんな支援はしたくないと 高橋は言う。
高橋が目指すのは その人が自らの力で生きられるまで 見届けること。
腰を据え 女性の話を聞き始めた。
かつて受けたいじめを 女性が語り始めた。
うん。
ああ…。
うん うん。
(鼻をすする音)
(鼻をすする音)
(鼻をすする音)
高橋は 女性がため込んできた思いを
あえて言葉にして 吐き出させる。
女性が 口を開いた。
女性は 暴力を振るわれるのは自分が悪いからだと思い込み→
自らを責めてきたという。

話し終わったとき 女性の顔は少しだけ ほころんだ。
密着1か月。 高橋が相談所にいることは
ほとんどなかった。
次から次へ 相談者のもとへ。
移動中も ひっきりなしに相談が舞い込む。
こうした支援は 窓口を設け
そこに来てもらうのが一般的。
しかし高橋は 窓口に来られない人にこそ
手厚い支援が必要だと考える。
この日は 筆舌しがたい虐待を受けていた