2020/05/03(日) 21:00〜22:10 NHKスペシャル「調査報告 クルーズ船〜未知のウイルス 闘いのカギ〜」[字]
感染者に起きる異変を目の当たりにしていました。
≫クルーズ船の感染者を
受け入れた病院でも
異変を感じていました。
乗客・乗員合わせて109人が搬送された
自衛隊中央病院。
現場の指揮を執った田村格さんは
軽症の患者が急変する
ある要因に気付くことになります。
全員の肺を詳細に調べるため
CT検査を行ったところ
症状のない人や
軽い症状の人でも、およそ半数に肺炎の所見が見られたのです。
田村≫ちょうど、この辺りですね。
田村≫サイレントニューモニア
沈黙の肺炎という意味で
サイレント肺炎というふうに
われわれは呼びました。
≫自覚症状がないまま肺で炎症が進行するという
サイレント肺炎。
この50代の男性。
当初、熱は37度程度で
自覚症状はありませんでしたが
CT検査では
肺炎の影が見られました。
≫そして、入院から4日後。
人工呼吸器が必要になるほど容体が悪化したのです。
入院時、無症状か軽症の人が
8割を占めていました。
ところが
次第に症状の悪化する人が相次ぎ
重症患者は19%から
27%にまで増えました。
田村さんが考える
サイレント肺炎が
起きる仕組みです。
感染すると肺に到達したウイルスが増殖。
上気道で
ウイルスが増殖しなければ
せきなどの症状は
ほとんど出ません。
肺炎も始めは範囲が狭く
炎症も軽いため
症状として現れないのです。
しかし、サイレント肺炎は気付かないうちに進行。
自覚症状が出たときには
重度の肺炎となっていて
急速に悪化したように
見えるのだと
田村さんは考えています。
≫横浜に停泊して数日がたったクルーズ船では
感染が判明する人の数が
急増していました。
現場で指揮を執った正林さんは
ひたすら増え続ける感染者への対応に追われていました。
≫当時、まだ現場では
症状が、どう悪化していくのか正確に把握できずにいました。
そうした中、搬送チームは
大きな課題に直面していました。
搬送を取りしきった阿南英明さん。
災害派遣医療のスペシャリストDMATのメンバーでした。
≫現場が迷ったのは
患者を搬送する優先順位です。
感染が判明した人のほとんどが
無症状か軽症でした。
一方で感染は分からないものの
体調不良を訴える人が相次いだのです。
感染の拡大を防ぐため
陽性の患者を優先的に搬送したところ
感染症指定病院のベッドは
あっという間に埋まってしまいました。
クルーズ船と病院との間で
調整を続けていた、中澤さん。
≫あふれた患者は一般の病院へと
搬送せざるをえません。
しかし、一部の病院から
「通常医療に支障が出ているためこれ以上、受け入れられない」
と言われたといいます。
そうした中
まだ感染が明らかになっていない
乗客の中に重症化する人が
現れ始めました。
≫夫とともに乗船していた女性。
夫婦にも異変が起きていました。
≫夫が38度の熱を出したのです。
結婚記念日を
船内で祝った直後のことでした。
≫女性は船内のコールセンターに
何度も連絡しましたが
すぐには対応してもらえなかった
といいます。
≫その夜には、女性も発熱。
夫の熱が39度を超えたため繰り返し連絡しましたが
この日も医師に診てもらうことは
かないませんでした。
≫同じころ、別の部屋では
陽性と分かったアメリカ人女性がすぐに病院に搬送されていました。
本人に自覚症状はなく
本当に急を要する状況だったのか分からないといいます。
≫感染しているかどうかだけで