2020/05/03(日) 21:00〜22:10 NHKスペシャル「調査報告 クルーズ船〜未知のウイルス 闘いのカギ〜」[字]


ところが、遅れて発症者が増えていたグループがあります。
船内での乗客の生活を
支えていた乗員たち
いわゆる
エッセンシャルワーカーへの
感染拡大です。
2月11日感染制御の専門家チームが
その原因の究明と対策に
乗り出しました。
船内の感染症に対する備えを



調査したところ
厳密なルールが
定められていたことが
分かりました。
また、緊急の事態に備え
手袋や医療現場で使用される
N95マスクなども
備蓄されていました。
しかし、こうした対策には
さまざまな落とし穴が
あったといいます。
≫N95のマスクは、装着すると
痛みや息苦しさを感じます。
≫多くの乗員は、ひもを外すなど
正しくない着け方をしていました。
マスクを気にして
手で顔を触る頻度が増えることも
感染のリスクを高めていました。
さらに、食事の配膳などのときに義務づけられていた
手袋の扱いにも注意が必要でした。
櫻井さんは手袋を着けていることが
心理的な安心感を与え
逆に手の消毒の機会が減っていた可能性を指摘します。
≫そして
乗員が置かれていた環境が
感染のリスクを高めていたことも
分かってきました。
乗員が共同生活をしていたのは
クルーキャビンと呼ばれるエリア。
多くが寝泊まりしていたのは

このような2段ベッドでした。
食事はシフト制で
大勢が食堂に集まりました。
この乗員は
体調を崩す仲間の様子を
目の当たりにしました。
≫それでも、2600人以上の乗客を支えるために
残された乗員は
仕事から外れるわけにはいきませんでした。
乗客が隔離されている間も
働き続けた乗員たち。
1045人のうち
145人が感染しました。
生活を支える
エッセンシャルワーカーを
どう感染から守るのか。
今、私たちが抱える課題に
クルーズ船はいち早く
直面していたのです。
隔離の長期化は思わぬ問題も
引き起こしていました。
乗客の中に
新型コロナウイルス以外の原因で体調を崩す人たちが現れたのです。
夫婦でクルーズ船に乗っていた
小柳剛さんです。
≫新型ウイルスには
感染しませんでしたが
別の問題を抱えていました。
高血圧や高脂血症で5種類以上の薬を服用していた
小柳さん。

隔離が始まると
不足した薬を船外に
要望できるようになりました。
しかし、乗客のもとには
なかなか届かなかったといいます。
≫乗客から寄せられた薬の希望は
2000人分。
しかし、医療チームの人員は
限られており薬への対応が
全く追いつかなかったのです。
やむにやまれず
小柳さんは報道陣に向かって
1枚の紙を示しました。
「ウイルスより緊急課題
クスリが必要」。
乗客たちの健康は大丈夫なのか。
2月中旬日本医師会の災害医療チームが
船内に入りました。
これは、どんな症状があったのか
300人以上の乗客・乗員を
診察した際のデータです。
新型ウイルスの
感染の症状とは異なる
ストレスや高血圧といったものが
およそ4割を占めていました。
医師団のリーダーを務めた
石川広己さん。
感染拡大を防ぐためにとられた
隔離の裏に
命に関わるリスクが