♪♪~
(冬吾)俺は もう絵が描けねえんだ。
♪♪~
がれきの下に子どもが埋まっていた。→
加寿子と同じぐらいの年の
男の子だ。
「母ちゃん 水くれ」って
俺の方に 手ぇ伸ばしてた。
回想
お水… お水 頂戴。
待ってろ!
今 助けてやるはんで!
♪♪~
俺は 助けてやりたかったんだども何も できねかった。→
絵筆も スケッチブックも
何の役にも立たねかった。
俺は 今まで
怖えもんが ねがった。
絵筆一本あれば
自分一人 高みに立って…。
人を上から
見下ろしていられたんだな。
人の悲しみも 喜びも
人の生き死にもな。
だども その時 絵筆が何になると
初めて思った。→
誰も助けられねえ。
人が死んでいぐのを。ちっせえ わらしが…→
泣きながら 死んでいくのを…
助けられねえんだな。
こったなものでは…。
♪♪~
(桜子)お姉ちゃん。
(西野)ごめんなさい。 桜子さん。
心当たりを
いくつか あたってみたんだけど→
代用教員の口を すぐにというのは
やっぱり 難しいわ。
そうですか。
(笛子)先生。今は 教員不足のはずですよね?
それは あの… やはり 夫の…→
冬吾の前歴が問題なのでしょうか?
それもあるし
杏子さんの逮捕歴の事もあるの。
小さな町ですからね。
でもね 1校だけ→
事務員としてなら 採用しても
いいという学校がありました。
そこで 働きぶりを見てもらって
改めて 代用教員としての採用を→
お願いしてみるという手も
ありますよ。
やってみる? 桜子さん。
音楽を 子ども達に教えたいというあなたの志は→
すぐには 果たせないけど。
どうする? 桜子。
やらせて頂けますか?
今は 仕事があるだけでもありがたいです。 お願いします。
♪♪~
(飯島)どうぞ!失礼致します。
♪♪~
有森さんですね。西野先生から紹介を受けました。
有森桜子と申します。
本日から お世話になります。
校長の飯島です。
こちらは 教頭の村木先生です。
よろしくお願い致します。
(小鳥のさえずり)
桜子から 事情は聞きました。
「子どもを助けようとしてうまくいかなかった」って。
うん。
ああいう状況だったら誰にでもある事だよ。
お芋 蒸しといたから
お昼に食べて下さいね。
うん…。
≪この野郎 逃げるな!≪捕まえろ!
≪この野郎 何 やっとるんだ!
泥棒!何 やっとるの? あんた達!
こいつが 俺の弁当を 盗もうと
したです。 体操の時間中に。
お弁当?
ちょっと 待ちなさい!
(村木)時々あるんですよ
弁当泥棒。
弁当泥棒?
生徒の中には 家の事情で→
満足に 弁当を持ってこれん子が
おるんです。→
空腹に耐えかねて
人の弁当を盗むんですよ。
ほうですか…。
どんな子でした?4年生ですか? 5年生ですか?
あっ いや…。
まあ いいじゃないですか 教頭!
未遂に終わったんだし
今回は これで よしとしましょう。
(加寿子)見て おねえちゃん!
2人で描いたの。よう描けとるね。
亨ちゃん よく見えとるみたい。
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