2020/12/13(日) 05:15〜05:45 桂文珍の演芸図鑑 選「六平直政 春風亭昇々 三遊亭志う歌」[字]


音羽屋さんの大変なごひいきなんですが→
女だてらに 大きな声出したりするのが

恥ずかしいもんですから→
私の代わりに褒めて下さいな』
って言うから→
『ええ いいですよ。 だけどね
ねえさんの褒めてえところと→
あっしの褒めてえところっていうのは
違うからさ→
ねえさんが いいなあと思ったところで
あっしの体 どこでもいいから→
さすってちょうだい』って
こう言ったんだよ」。
「この野郎 妙なこと言いやがったね。
どうしたい」。
「これがまた きれいな指なんだよ。→
白魚を5本並べたようなってえかね→
アスパラガスの瓶詰め
神様へあげるロウソク。→
それが5本並んだような指でもって


俺のここを ささ~っときたから→
『音羽屋! 音羽屋!→
たァや~! たァや~!→
たら! たら! たら! たら!』ってんで
褒めてたんだよ。→
そしたら こっちっかたの男が
俺の袖を つつっと引っ張るんだよ。→
『何ですか?』っつったら
『幕閉まってますよ』って」。
「お前 幕褒めてたのか」。
「しょうがねえから 『いい幕だ~』」。
「だらしがねえな」。
「そしたらよう 女がいねえんだよ」。
「当たりめえだよ。
お前が そんなマヌケなことしたから→
愛想尽かして帰っちゃったんだよ」。
「そう思うだろ?→
俺もそう思ったんだけど違うんだな。
若え衆が飛んできてよ→
『今 にいさんの隣にいたおねえさんが
表で にいさんのこと呼んでますよ』→
ってんだよ。 ついてくってえと
粋な小料理屋があったね。→
階段をとんとんとんとんと上がるってえと
突き当たりが4畳半なんだよ。→
そこの戸を
すっすっす~っと開けるってえと→
女が こう 横っ座りで…
こうやって こうやって いるんだよ!」。
「じゃ 何かい

お前と その女と 差し向けえ…」。
「そうなんだよ。 女が 俺の顔を
穴の開くほど じ~っと見るってえと→
『おにいさん。 おにいさんて
こちらの方は やるんですか?』って→
こうやって聞くんだよ。 『ええ。
酒だったら浴びるほど頂戴します』。→
キュッと飲み干して
杯洗でゆすいで ご返杯。→
女の方も キュッと飲み干して
杯洗でゆすいで ご返杯。→
やったり取ったり 10万杯!」。
「随分飲みやがったね」。
「そしたら 俺
しょんべん行きたくなっちまってよ」。
「この野郎 お前 色消しだよ。
いいところで何だって…」。
「しょうがねえじゃねえかよ
行きたくなっちまったんだからよ。→ 
だけど そう 色消しなんだよ。
俺 もう 我慢しようと思ってさ→
ごろっと横になったんだよ。
そしたら 女が気ぃ利かしてくれたね。→
次の間の障子を
す~っと開けるってえと→
布団が敷いてやがるんだよ。
これが お前 ただの布団じゃないよ。→
絹布だよ 絹布の3枚重ねだよ。
1枚が こんなに分厚いんだよ。→
3枚だから こんなんだよ。→

上がる時は お前はしご使ってよ→
下りる時 パラシュート」。
「大げさだよ お前の言うことは」。
「布団の中に入るってえと
女が つっつっつ~って→
ナメクジみたいに つっつっつ~って来て
『おにいさん 私→
おにいさんのこと
好きになっちゃったみたい』。→
『あっしも ねえさん好きだよ』。
『じゃあ→
布団の中 入っていいかしら』って言うから
『入っていいか→
自分の胸に手ぇ当てて
聞いてごらんなせえ』。→
女が部屋の隅の方へ行って
戻ってくるってえと→
『今 自分の胸に手ぇ当てて聞いたら→
入っていいって言ってました』って→
言うんだよお」。