2020/12/13(日) 05:15〜05:45 桂文珍の演芸図鑑 選「六平直政 春風亭昇々 三遊亭志う歌」[字]


「ほおほおほおほお ゴッ」。
「鼻なんか鳴らすんじゃねえ お前は。→
女ってのはいろんなものを着てやがるんだね。→
着物を脱ぐっていうと 長襦袢一枚だよ。→

これが 燃えたつような緋縮緬の長襦袢ってやつだよ。→
こいつ一枚になるってえとよ
俺の布団に入ってきて→
キッスを キッスを…」。
「したのか!」。
「しようかな~っと思ったら


『半さん 1つ食わねえか』って→
起こしたの 誰だ!」。
「夢かよ!おっそろしく長え夢見やがったね。→
そんだけはっきりしてるんだ
1つぐらい 本当のところあんだろうな」。
「ああ そういや この辺が
つ~っと 湿っぽくなってる」。
(拍手)
♪♪~(出囃子)
♪♪~(出囃子)
(拍手)
ええ~ まあ
いろいろと大変なご時世で→
マスクをしてね
外へ出るなんてことが→
もう 当たり前になっておりますが→
まあ 我々の方は 相も変わらずといったところでございまして→
よく縁起を担いで 泥棒のお噺をする
なんてことがございます。
泥棒のお噺は どういう訳で
縁起を担ぐことになるかってえと→
お客様の懐を
こちらへ取り込もうってんでね→
それで 縁起がいいってんですな。
まあ 強引な話があるようでございますけれども→
まあ 大体が この泥棒なんてえのも→
恐ろしい泥棒なんてえのは噺の方には出てまいりません。
大体が 何にもとらねえうちに
捕まっちゃいそうなやつばかりが→
出てまいりますが。

浅草の観音様 あそこは大変に大勢 人が出ておりまして→
賽銭の上がりも
さぞかし多かろうってんで→
夜陰に乗じて忍び込んだ マヌケな泥棒。
麻の風呂敷を ば~っと広げまして→
そこに 賽銭箱ん中の賽銭を
ぎっちりと詰めまして→
こいつを どっこいしょってんで しょって
裏から逃げりゃあいいんですが→
表の方が歩きやすいし また 夜だから
誰も人がいないだろうからってんで→
よしゃあいいのに
表門の方まで回ってきた。
すると あそこには 門番として
仁王様てえのが立ってます。
この仁王様が こいつを見て怒った。
「この野郎 俺という者がいながら賽銭を盗んで表から逃げるとは→
ふてえ野郎だ。 面ぁ見せろ~!」。
襟っ首のところを がっとつかんでぐ~っと持ち上げといて パッと離した。
泥棒が四つんばいになったところを
あの仁王様の大きな足でもって→
グア~ってんで踏みつけたもんですから
たまりませんですな。
泥棒…
ちょっと尾籠なお話で恐れ入りますが→
一発 大きいやつを ブイッと放った。
「んん~ くせもの~!」。
「におうか~」。
くだらねえ話があるようでございますが。
「おお 新米 いいからこっち入れ」。

「どうも 頭」。「どうもじゃねえやな。→
お前… お前な
仲間 みんな言ってるぜ。→
どうにも向いてねえようだから→
足洗わしてかたぎにした方がいいんじゃねえかって→
みんな そう言ってるけれども
どうなんだ」。
「あの これからはね
真心に立ち返って 真摯に 一生懸命→
悪事に励みますんで」。
「どうも言うことがおかしいや。→
まあまあ いいや。
何か言ってもしょうがねえから→
俺が ちょいと
じきじきに仕込んでやろう」。
「頭がですか。
それはありがとう存じます。→
ええ~ あの どうしたらいいんで?」。
「よし。 ちょうど暗くなってきたからな→
早速 出かけるぞ。→
面を こしれえろ!」。「え?」。
「面を こしれえろ!」。
「あの 頭の前ですけどね→
こんな つまらねえ面ですけど
面は出来てんすよ」。
「いや そうじゃねえよ。
分からねえかな。→
そこに ほら 墨と筆があんだろ。
それでもって髭を描くんだ 髭を」。
「あ 髭ですか。