2020/12/20(日) 04:30〜05:00 イッピン・選「名匠への道 伝えられた技を極めたい〜静岡 漆製品〜」[解][字]


やっぱ気持ちだけじゃ できなくてね。
技術的にですか?

何て言えばいいんだろう。
やり始めて…
職人として10年腕を磨いてきた この工房。
でも それ以前から
ここは なじみ深い場所でした。
父からは
職人になれとは言われませんでした。
20代で結婚 子供も2人でき→
子育てに追われる日々を過ごしていた時…。
成三郎さんが倒れたのです。
心筋梗塞でした。
代々 伝えられた技法を
私の代で絶やしたくない。
30歳を超えた 遅い弟子入りでした。
塗下駄作りの手順を覚えたあとも→
動きと迫力のある絵柄には
なかなか手が出せませんでした。
子供たちが喜びそうなものをと考え→


試みたのがバンビの絵柄でした。
こうした下駄が若い人たちの関心をひき→
各地で展示会を開くように。
ところが今年
静岡や東京で予定されていた展示会は→
軒並み中止に。
新型コロナウイルスの感染拡大が理由です。
お店に立つこともできなかったですし→
お客さんと直接 話すこともできなかったので。
今年は…
突然 空いてしまった時間。
それは仁美さんが
自分を見つめ直す機会になりました。
これまで できなかったことを
やってみたい。
父 成三郎さんが以前 仕上げた→
「鳳凰」。
この伝統的な柄に
挑戦することにしたのです。
その手本を すぐそばに置きながら。
♪♪~
絵と一緒で…
成三郎さんの鳳凰。
翼の羽根を見て下さい。
かたい芯の部分は密度を濃く→
やわらかく細かい毛は まばらに。
どの羽根にも 少しずつ変化をつけ→
動きを感じさせます。
どこまで父の技に近づけるか。
これが

職人としての正念場かもしれません。
一から ちゃんと…
まだまだ 習わなければならないことがたくさんあるという仁美さん。
父の姿は はるか道の先に。
でも しっかりと見えています。
漆の器って
普通 表面が なめらかですよね。
でも これは違うんです。
金剛石目塗といい触ると微妙な凹凸が。
漆に
砂を蒔いているんです。
やはり4年前 その工房にお邪魔しました。
お座り下さい。
鳥羽俊行さん。
金剛石目塗の3代目です。
技法が完成したのは大正時代。
まず 漆の下塗りの上に砂を蒔きます。
最初は 大きめの砂を。
そのあと 粒の小さな砂を。
こうして 丈夫な下地ができました。
更に 漆を塗り込み→
その上から もっと細かい砂を蒔きます。
砂粒の大きさ なんと0.1ミリ以下。
蒔き終わったら乾燥させ 表面を磨きます。
手に触れた時ちょうどよい感触になるように。
指先の感覚だけで探り当てます。
最後に 漆を薄く塗って完成です。
いつまでも使える丈夫さ。
しっくりくる手触り。
砂を巧みに使う技術が

それを実現していました。
あれから4年。
工房に…→
あの時は見かけなかった
若い職人の姿がありました。
鳥羽直希さん 28歳。 俊行さんの息子です。
少し前までサラリーマンをしていました。
心機一転
父のもとで職人になる決意をして→
1年と5か月です。
実際 そうですねやってみて 今 ちょっと…
弟子入りして最初に教えられたのが→
花瓶を作ること。
木の器に漆を塗ったものではありません。
漆と砂を混ぜ合わせ花瓶の形に固めて できているんです。
一つ出来上がるまでに 3か月かかります。
5回に分け少しずつ塗り重ねては 乾かすからです。
漆と砂を混ぜ合わせます。
それぞれの性質とそれが混ざった時に どうなるかを→
よく知っていなければ 花瓶はできません。