2020/12/21(月) 15:00〜15:30 日本の話芸 笑福亭たま 落語「地獄八景」[解][字][再]
「そう。 Go To とがめる(トラベル)」。
「何でんねん それ」。
辻を回りますと そこは念仏町。
念仏をぎょうさん売ってる店が
ズラ~っと並んでおります。
1人でもですね
お客さんを呼び込もうというので→
客引きが出ております。
「ご同行~!」。
♪♪~
「南無阿弥陀仏屋でございます。南無阿弥陀仏屋でございます」。
「え~ こちらは
南無妙法蓮華経屋でございます」。
「え~ こちらは オンアボキャ~ベ~
ロシャノマカボダラ→
マニハンドマジンバラ ハラバリタ屋で
ございます~」。
いろんな念仏を売ってる店がございまして
そこで 皆 念仏を買い求めます。
やって参りましたのが
三途の川でございまして→
大きな木の杭に
「三途の川 渡船場」と書いたある。
「出~すぞ 出すぞ!
出~しま~すぞ~!」。
大きな赤鬼が出てまいりまして
これが鬼の船頭さんでございましてね→
渡船場で亡者に声をかけております。
「おい! こっち来い こっち来い。そこ! そこ 1列に並べ。→
ほいで 渡し賃そこや。 そこや。
あっ 現金あかんで。→
キャッシュレスになっとんねん。→
クレジットカードかなあの… オンライン決済にしといてや。→
ああ 分かったな? そこでやったら
こっち 船に乗り込め。 船に乗り込め」。
「へえ~。 船頭さん
え? ここ キャッシュレス?→
IT化が進んでまんねんな」。
「当たり前やないかい。→
もう今 ITやで。
死人出入り帳 鬼籍の名簿かてな→
データで 皆 こっち パソコンで
送られてくんのやないかいな。→
もう そんなんな もう娑婆と違うねん。
どんどんIT化や。 なあ。→
データは こっち側に送られてくるしやな
お前ら乗客はな 顔認証やで。 AIでな」。
「へえ~ すごいデジタル化ですね!
ほんで この船の動力は?」。
「手こぎや」。
「いや ちょっと待って下さい。→
三途の川を渡る船は 手こぎですか。→
せやけど この船えらい立派な船でんなあ。→
木の船や思てたけど
豪華客船やないですか。→
何や 名前書いてある。
『ダイヤモンド・プリンセス号』。→
へえ~ すごい船でんなあ」。
「ああ そうや。→
娑婆より こっちの方が
もう運航いっぱい出てるから→
こっちへ使おうちゅうことになったんや」。
「へえ~。 せやけど大丈夫ですか?」。
「大丈夫。 ゾーニングとか
ちゃんと してあんねん。→
ほんでな しんだいのな
感染症の専門家 呼んだん」。
「神大の感染症の専門家いうたら→
神大いうたら 神戸大学のあの岩田健太郎さんみたいな?→
ダイヤモンド・プリンセス号に乗った→
岩田健太郎さんみたいな神戸大学のお医者さんですか?」。
「違うがな。 死んだ医者。
死んだ医の感染症の専門家」。
「ちょっと待っとくんなはれ。
『しんだい』て 神戸大学と違いまんの?」。
「うん 違うがな。
さあ 乗り込め 乗り込め。→
お前ら 言うとくで。
三途の川 渡ったら閻魔の庁へ着く。→
そこへ行ったら 皆 お裁きがあるさかいな
お前ら 分かったな?→
オール パッセンジャーズ。→
ウェルカム ア ボート ディス シップオン ザ サンズリバー。→
ウィ ウィル ビー アライビング
アット ジ エンマノチョウ。→
トゥ ビー ジャッジド
フォー アクセプタンス。 サンキュー」。
「すんまへん。 それ 何でんねん それ」。
「今 もう アナウンスせなあかんねん英語で。 ごちゃごちゃ言わんでええねん」。
乗り前が決まったと見えまして
歩み板をば上げてしまいます。
赤樫の櫂をば
ひとつ ぐ~っと突きますと→
船は岸を離れて 沖へ沖へ。
深みへ出てまいりますともう櫂では届きません。
櫓へと変わります。
長い長いやつをば ザブ~ン。
櫓臍にガチャリとはめ込みますと→
船頭さん プッと きり水の一杯を吹いたところで→
赤松を割ったような