2020/12/22(火) 01:45〜02:30 スポーツ×ヒューマン 選「速く走れないなら死んでいるのと同じ 陸上 福島千里」[字]
おしゃれのためではなく感覚を敏感にするため。
♪♪「さあ がんばろうぜ!
負けるなよ そうさ オマエの」
速く走ることだけを考える毎日だった。
しかし 思うようには進まなかった。
3月末 新型コロナで
東京オリンピックの延期が決定。
競技場の閉鎖も相次いだ。
取材を再開したのは初レースを前にした7月。
空白の時間について聞いたが…
4か月遅れの初レースはあいにくの雨だった。
低すぎるテンションに違和感を覚えた。
初戦の目標は 日本選手権の参加標準記録11秒80を切ること。
これまでの福島なら
問題にしないタイムだ。
4か月ぶりに見た福島の動きは
キレがなく 重かった。
「On your marks」。
「Set」。
(スタートの合図の音)
記録は…
自身の持つ日本記録に比べて
1秒以上遅い。
練習でも考えられないタイムだった。
スタートからスピードに乗らない。
最下位で離されていく福島を見るのは
初めてだった。
私は 彼女が途中で走るのを
諦めてしまったのではないか→
…とさえ思った。
福島さん すいません。 お疲れさまでした。
福島は 流しても
11秒台で走ることのできる選手だった。
ありがとうございます。
私は オブラートに包まずに質問した。
私は 精神的な原因などで
思うような動作が突然できなくなる→
「イップス」を疑った。
う~ん… いや…
ごめんなさい。
私は 踏み込み過ぎた。
これで 福島への取材は
終わってしまったと思った。
翌日 福島から連絡があった。
彼女は レースの違和感の答えを自分なりに探そうとしていた。
言葉で答えを求める私に こう言った。
このあと 福島から密着取材は やめてほしいと言われた。
8月。
無観客で関係者以外立ち入り禁止となった大学の記録会。
学生しかいないはずの大会に
福島の姿があった。
本来であれば 今シーズン
無理に試合に出続ける必要はなかった。
今年の成績は
オリンピックの選考に影響しない。
福島の選択は異例とも思えた。
タイムは…
前のレースの結果は
アクシデントではなかった。
福島は こうした大学の記録会に
1か月にわたって 参加し続けた。
なぜ そうまでして走り続けるのか?
4年前 現役を続けるか揺れていた福島に私は こう言った。
その先に どん底のシーズンが
待っているとも知らずに。
♪♪~
9月上旬福島から久しぶりに連絡があった。
標高1,000m 記録が出やすいとされる
競技場でレースに出るという。
東京オリンピックを目指す
トップアスリートが集まり→
好タイムを狙った。
競技場で 2か月ぶりに見る福島。
気軽には声をかけられない雰囲気だった。
日本選手権の参加標準記録に挑むラストチャンスだった。
大会に臨む前 福島は 私に こう言った。
以前のようには速く走れないこと。
誰よりも 福島自身が分かっていたはずだ。
「On your marks」。
「Set」。
(スタートの合図の音)
(実況)さあ まずは1組。
号砲とともに 吹き流しが流れた。→
6レーンは 高橋さん。→
5レーンが 田中さん。
結局
日本選手権の標準記録は切れなかった。
(実況)8レーンの福島さん 12秒27。
よろしくお願いします。
お疲れさまでした。
♪♪~
この日もまた 福島は競技場にいた。
今シーズン最後の試合に出るためだった。
(スタートの合図の音)
♪♪~
福島は最後に
シーズンベストを出した。
(実況)それでは これからお伝えする種目
女子の100m決勝が→
男子に先立って行われます。→