♪♪~
(マサ)<待ちに待った桜子の初舞台の日です。 が…>
(笑い声と 冷やかす声)
(秋山)気にするな。(桜子)すいません。
(まばらな拍手)
よし いこう。→
ワン ツー ワン ツー。
♪♪~
♪♪~(調子が外れたピアノ)
(笑い声と 冷やかす声)
♪♪~
♪♪~ 調子が合ってくる
♪♪~
(野木山)おや お珍しい。(冬吾)御無沙汰してます。
何か 御用で?
いや ちょこっとな。
ああ~。
よう。(達彦)冬吾さん。
久しぶりだな。
はい ホントに。
無事で何よりだ。
はい。
桜ちゃんは 今
名古屋で ピアノ弾いてるんだ。
ええ。
聴きに行ってやらねえのか?
桜ちゃんと 一緒にならねえのか?
俺 戦友を死なせたんです。
一緒に戦った
ほとんどの人間が死にました。
自分だけが 幸せになっちゃ
いかんような気がするんです。
言い訳だべ そったのは。
戦争の間は 明日生きる事だけ考えてれば済む。
戦争が終わってまったから→
どうしたらいいか分からねぐなってるんだべ。
それは… そうかもしれません。
自信がないです。
今の彼女にとって 自分が
ふさわしい男なのかどうか。
有森は 音楽家になりたいっちゅう
小さい頃からの夢を→
いろんな事に阻まれて
実現できなかった。
時代が変わって 今
やっと 芽が出かけとるんです。
こんな時に 彼女の重荷に
なりたくないんです。
あんだは 戦地から帰ってきて→
これからは 人の邪魔にならねえで生きていきたいと→
思ってるのかもしれねえが→
そったな事は 無理だべ。
人は 誰かの邪魔したり
迷惑をかけねえでは→
生きていけねえもんだよ。
それになあんだは もう 今までに→
十分に 桜ちゃんに
迷惑をかけてる。
今更 迷惑をかけたぐねえなんて
言えた義理か?
これからは かけた迷惑を
返すぐらいの気持ちに→
なってみたら どうだ?
そんなに しょげんなよ。次のステージだって あるんだ。はい。
(ヒロ)桜子ちゃん。
ヒロさん。 聴きに来てくれたんだ。
今日は 店は
臨時休業で やって参りました。
ありがとう。
達彦君 来てなかったみたいだね?
…うん。
僕が聴いててあげるから。
僕を達彦君だと思って
弾きなさい。
ヒロさん。
♪♪~
(仙吉)女将さんが亡くなられる
1年ほど前に撮った写真です。
ほうか…。
実は その少し前に→
女将さんは 医者に
余命 僅かだと言われました。
若女将は 女将さんをみとる覚悟で
店に入ってこられたんです。
店を切り盛りするかたわら
女将さんの看病をなさって→
最後の方は もう 付きっきりで
見ておくれました。
その写真は 女将さんが→
「一生に 一遍でいいでドレスを着てみたい」と→
お言いになったのを→
若女将が 戦中の物資のない中苦労して作られたもんなんですわ。
若女将は
大将の部屋に寝泊まりして→
大将のピアノを 女将さんのために
弾いとられました。
おふくろのために?
ほうです。
そこの戸を開けとくと→
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