斉藤さんという方です。→
斉藤直道さん。

♪♪～
先生！
（斉藤）お久しぶりです。
夢みたいだわ！　どうして？
松井桜子さんって　やっぱりあなただったんですね。えっ？
名古屋に出張に行って
寄ったお店で→
偶然　これを見かけたんです。
もしかしたらと思って。そうだったんですね。
ご主人ですか？
初めまして。
初めまして。　斉藤です。
どうぞ　奥へ。いえ　ここで結構です。
本当に
お元気な姿を見られただけで。
どうぞ　お座り下さい。
♪♪～
先生は


今　どうされてるんですか？
東京で　物理を教えています。
教員に　復帰なされたんですね。
はい。　理系だったのが幸いして
徴兵もされずに　済んだんです。
ご結婚は？
しました。　面目ない。面目ないなんて　そんな…。
おめでとうございます。
妻も　学校の教師なんです。
組合の同志で　気が強くて
弁が立って　親分肌で→
僕は尻に敷かれっ放しです。
そうなんですか。
磯さんと笛子さんを　足して
２で割ったような人なんです。
ホントですか？　それだと大変ですね。
そうです。　大変なんです。
この前も　あの帽子を見つかって
えらい事に…。
帽子？
ああ…　あれ　まだ持っとらして下さったんですか？
「この帽子を見ながら
妹を思い出して下さい」。
笛子さんに　そう言われた事が
胸に刺さって→
いまだに　捨てられないんです。
まあ　僕は　もともと物を捨てられないたちなんで。
いつか　娘に譲ろうと思ってます。
娘さんも　いらっしゃるんですね。今　１歳です。
幸せなんですね。

桜子さんも…　ですよね？
はい。
本当　このチラシを見た時僕は　うれしかった。
「ああ　あなたは　やっぱり
音楽の志を捨てずに→
長い年月を生きてこられたんだな」
と思いましてね。
先生…。
♪♪～
　回想　
（汽笛）
♪♪～
先生！
あなたも
音楽だけは　諦めちゃいけない。
つらくても
後ろを向いちゃ　駄目です。
分かりましたか？　桜子さん。
♪♪～
笑って下さい。
♪♪～
覚えていますか？
覚えてます。
「音楽だけは　諦めるな」と
言って下さいました。
≪（斉藤）そうですね。
♪♪～
桜子さん。　よかったですね。
先生。
いや…　僕は　うれしい。

本当に　うれしいです！
♪♪～
桜子！
お前　やっぱり　頑張れ。
演奏会。
いや　そんな事　言われんでも
お前は　頑張るだろうけど。
気が付いたんだ。
お前は　たった一人で　音楽をやってきた訳じゃないんだよな。
亡くなった　お母さんや　お父さん。
それに　あの先生やいろんな人の思いを引き受けて→
今　ピアノの前におるんだな。
簡単に「諦めろ」なんて言って悪かった。
ううん。
♪♪～
♪♪～（ピアノ）
＜そして　演奏会　当日＞
ごめんね。　もうすぐ終わるから。
いいよ。　ここで聴いとるから。
♪♪～（ピアノ）