去年10月。
歴史的な舞台の幕が 上がろうとしていた。
新国立劇場バレエ団の
コロナ禍以降 初めて行われる全幕公演。
注目は この日がデビューとなる新監督。
「ロイヤルの至宝」と呼ばれた世界的な元バレリーナ。
世界三大バレエの一つと言われる
英国ロイヤル・バレエ団。
東洋人女性として初めて
バレエ団トップに立った→
伝説のダンサーだ。
53歳で現役を引退→
去年 芸術監督として
新たなスタートを切った。
だが…。
新人監督は コロナ禍という逆風の中で船出した。
それでも志は 揺るがない。
芸術監督 吉田 都。
新たな闘いの日々を追った。
よろしくお願いします。
吉田 都は この日
都内の撮影スタジオにいた。
監督デビュー公演に向けて
特別にポスターを作るという。
ウフフ いいですね。
おお~。
初めての裏方に 笑顔を見せる。
だが…。
撮影が進むと 細かく注文をつけ始めた。
妥協できない性格は 現役時代のままだ。
吉田が芸術監督に就任した
新国立劇場バレエ団は→
70名のプロダンサーを擁する
日本最大のバレエ団だ。
新監督は
本場ヨーロッパのスタッフと共に→
新しい作品を制作しようと計画していた。
ところが…。
コロナの影響で
外国から人を呼べなくなっていた。
バレエ団 創設以来の危機だった。
9月。
吉田は 初めて全団員を前に
挨拶をすることになった。
ダンサーは皆 100倍もの倍率を突破して
入団したエリートたちだ。
(拍手)
まず 何を伝えるのか。
口にしたのは 意外な内容だった。
バレエの基本動作 脚を曲げる…
上半身をしなやかに動かす…
どれも基礎中の基礎。それができていないという。
ヨーロッパで闘い続けた吉田が痛感する
一つの事実があった。
この日 吉田が見るのは バレエ団のトップ
看板ダンサー2人のリハーサル。
バレエ団付属の研修所の催しで
模範演技をすることになっていた。
♪♪~
ベテランの2人が何度も踊った慣れ親しんだ演目だ。
だが…。
序盤から練習を止める。
求めたのは 吉田が英国ロイヤル・バレエで
培った 優雅で 繊細な動き。
(笑い声)
本番前日 最終確認の舞台リハーサル。
♪♪~
終わるやいなや 席を立った。
再び徹底指導が始まった。
本番直前に 踊りを変えるのはリスクもある。
それでも吉田は 指導を続ける。
胸に秘めた 志があった。
世界には 別格の存在として知られる
名門バレエ団がある。
マリインスキー。
オペラ座。
そして 吉田が所属していた
英国ロイヤル・バレエ。
ミリ単位の精度を追求し
トップで踊り続けた吉田。
目指す理想は高い。
新国立劇場は もともとバレエ団が常駐することを前提に→
設計された施設ではない。
そのため トップダンサーでさえ個室はなく→
廊下のベンチで体を休めるしかない。
そこで吉田さんが運営側に交渉。小さな改革を始めた。
ストレッチができるように
ダンサー専用のスペースを廊下に設けた。
トレーニングルームも新設。
事務所には カーペットを敷いて休憩できる場所を作った。
(手拍子)
♪♪「ハッピー バースデー トゥ ユー」
♪♪「ハッピー バースデー ディア 都さん」
(拍手と歓声)
♪♪「ハッピー バースデー トゥ ユー」
(拍手)
(拍手)
♪♪~
吉田 都さんが 世界への一歩を
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