♪♪~
♪♪「お前の池なる」
山村千鳥一座は ここ三楽劇場で→
月替わりに
こうした演目を上演しておりました。
中でも この「清盛と仏御前」という演目は
千鳥のおはこでございました。
♪♪~
(千鳥)私は もう 故郷に帰ってやぶ草の中に埋もれましても→
名残惜しいとは思いませぬ。
今日のお目見えを一生の思い出といたします。
いつか役が貰えると信じて→
山村千鳥の世話係に戻った千代ちゃんやけど…。
(千代)お疲れさんだす。
疲れてない。
険しい道のりやなあ。
♪♪「オレンジのクレヨンで描いた太陽だけじゃ」
♪♪「まだ何か足りない気がした」
♪♪「涙色したブルー こぼれて ひろがって」
♪♪「ほら いつも通りの空」
♪♪「これは夢じゃない(夢みたい)」
♪♪「傷つけば痛い(嘘じゃない)」
♪♪「どんな今日も愛したいのにな」
♪♪「笑顔をあきらめたくないよ」
♪♪「転んでも ただでは起きない」
♪♪「そう 強くなれる」
♪♪「かさぶたが消えたなら」
♪♪「聞いてくれるといいな」
♪♪「泣き笑いのエピソードを」
♪♪~
(千鳥)何なの 今日の芝居は…。
(清子)すみません。
どこが あかんかったんでしょうか?
知らないわよ そんなこと!
すみません!
(千鳥)でも 駄目なものは駄目!
千代! 台本!
はい。
<また投げんの!?>シゲ! うすのろ!→
あんたよ あんた!→
汗ダラダラ流して 声 必死に張り上げていい芝居した気になってんじゃない!
(シゲ)す… すんまへん!
けど 勝手に汗が… ハハハハ…。
(悲鳴)
あきまへん!
あきまへん!
私は ただもう上様の大きな光に包まれて→
ほかのものは何も目に入りませぬ。
そうして 私は だんだんと 上様に捨てられていくのでございましょう。
おはようさんでございます。
セリフ いつ覚えたの?
お稽古見てるうちに自然と。
いざとなったら 代役もできるってこと?
はい!
できるわけないでしょ!
あなたの その下手なセリフ
ずっと聞かされてたら→
こっちまで芝居が下手になる。
二度と声に出さないで。
♪♪~(三味線)
違う!すんまへん。
♪♪~(三味線)
(千鳥)何べん言ったら分かんだ!すんまへん!
シゲじゃない! 美鈴!
(美鈴)すんまへん!
千代!
はい。
艶子!
(艶子)はい! すいません!
全員やり直し!
(悲鳴)
何なの これ。
何だす? それ。
これ 私の大切な… 大切な…。
すんまへん すんまへん。
こうして 千鳥さんは ものを投げ続け…。
だいぶ上達したわね。ありがとうございます!
まさか こんなに…→
見つけられるようになるなんて。
コツがありまして。
こういうものは→
めったにないから うれしいの。
私の喜びを 奪わないで!
千鳥さんの不条理にも
だいぶ慣れてきた千代ちゃんやったけど→
四葉が増える一方で…。
あなたには死んでもらいたい!右大将様!
私は まだ死にませぬ。
生き栄えてゆかねばなりませぬ。
ごめんあそばせ 右大将様。
(柝の音)
お客さんの数は
日に日に減っていきました。
そして とうとう 千鳥さんのもとに
三楽劇場の座本さんがやって来ました。
昔から あんさんの ひいきやったしなあ→
座本のわしも 今日まで見て見んふりしてきたんやけど→
さすがに もうあかんわ。
あと半月… そういうこっちゃ。
頼むわな。