ここは とある市役所。
その一角にある課長席には今日も誰もいません。
決裁待ちの書類が
こんなに たまっています。
(読経)
引き取り手のない遺骨を放っておけませんでした。
今 市役所には そんな遺骨が
たくさん寄せられています。
本来なら
「無縁遺骨」として処理されますが→
北見さんは 縁をつなぎとめようと
家族を探しています。
亡き人に思いを寄せる姿から
「ハカチョウ」と呼ばれています。
すいません。
23歳で 市役所に就職。
最初は望んでいなかった福祉の道。
(北見)いるわ いる。
でも今では やらなくてもいい仕事にまで
わざわざ首を突っ込みます。
熱い思いを 周囲にぶつけることも…。
他人のことに深く関わり おせっかいを焼くことに 気が引けてしまう この時代。
どうして その流れに
一人 あらがっているのか→
知りたいと思いました。
♪♪~
今回の主人公 北見課長は
福祉畑を歩んできた 60歳。
この春 定年を迎えます。
寒いもんね~。
(ノック)
この日も 病院に行く約束はしてもらえませんでした。
♪♪~
都市部の中でいち早く高齢化が進む 横須賀市。
その課題と 最前線で向き合う
福祉部の中で→
生活保護の人などの自立を支援するのが→
北見さんの担当課です。
ところが「ハカチョウ」の北見さんを頼って
さまざまな相談が寄せられます。
いや お取り込み中だったんで。
(北見)あ いいよ。
市の火葬場を管轄する課長さんです。
働き手がいなくて困っているといいます。
こちらは葬儀屋さん。 預かった遺体が
そのままになっているといいます。
えっ!
本業のかたわらで 北見さんはつい こうした相談に乗ってしまいます。
この日 北見さんのもとに
一つの遺骨が持ち込まれました。
あ これだと分かんない。
生涯独身だった 86歳の女性。
自宅の火災で やけどを負い
病院で亡くなりました。
女性の後見人が
遺骨の引き取り手がいないため→
何とかしたいと
相談を持ちかけました。
女性は 両親の位牌を
亡くなるまで大切に持っていました。
死因は何だったんだろうね。
すると北見さんは…→
女性の生涯を聞き取り まとめ始めました。
(北見)そうだよなぁ。
さまざまな職場を
渡り歩き→
貧困の中で亡くなっていました。
相談を受けてから 10日後。
こんにちは~。
はい。お願いしま~す。
ありがとうございます。
大変 せん越ですがざっと読ませて頂きますと…。 え~。
取り出したのは
女性の生涯をまとめた あのメモでした。
(読経)
顔も見たことのない女性の最後に寄り添いました。
北見さんは どうして 見知らぬ人の人生に
ここまで関わるのでしょうか。
10年目に
生活保護の担当になりましたが→
当初は 福祉の仕事に
興味を持てませんでした。
そんな北見さんに大切なことを気付かせる
きっかけになった家族がいました。
息子が病気になり
入院費がかさんだことで 家計が悪化。
更に 父親が亡くなり
生活は たちまち追い込まれていきました。
その家族の姿は
北見さん自身の体験と重なりました。
懸命に生きながらも
生活が一変してしまう人たち。
いるわ いる。
こんにちは。
思いを向けたのは
生きている人たちだけではありません。
高齢化と無縁化が進むにつれて増えている
引き取り手のない遺骨です。
お父さんの ご位牌ですよね。
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