2020/12/22(火) 01:45〜02:30 スポーツ×ヒューマン 選「速く走れないなら死んでいるのと同じ 陸上 福島千里」[字]

彼女は 走ることに全てを懸けていた。
「On your marks」。
今シーズン。
日本選手権すら出られない
かつてない苦境に追い込まれていた。
「Set」。
(スタートの合図の音)
自身の持つ日本記録よりも
1秒以上遅い走り。
かつて 福島と私はライバルだった。
(スタートの合図の音)
北京 ロンドン そしてリオ。
はるか前を走っていく彼女を見つめてきた。
その福島が今 高校生にも勝てない。
私は初めて カメラを向けた。
それでも彼女は 速く走ることを諦めない。
そこまでして なぜ…?
誰も知らない 福島千里。
1年を追った。
♪♪~
私が福島と出会ったのは 16年前。高校生の時だった。
(実況)福島千里。 この福島のスタートにも
ぜひ注目をして下さい。
この時 私は隣のレーンにいた。
(実況)右から3人目 福島。
「よ~い」。
(スタートの合図の音)
(実況)スタートしました!
そろったスタート。
1歩目で1m以上 前にいた。


(解説)福島が出ましたね。
福島のスピードは衝撃的だった。
共に日本代表の試合に出場するなど切磋琢磨した。
合宿で練習を重ね
私たちは何でも話せる関係となった。
けがをして結果が出なくなった私は
現役を退いたが→
彼女は はるか先を突き進んでいった。
(スタートの合図の音)
日本記録を11回更新。
その記録はいまだに破られていない。
言いたいんですけど。
(子どもたち)速っ! 速っ! 速っ…!
福島は感覚で走るタイプ。
記者とのやり取りでは いつも不思議な空気が流れた。
(実況)もう出た! 福島出た!
2レーンの藤森も頑張っている!→
福島がもう出た。
そして5レーンの世古もついている。→
福島! 福島!
3度目のオリンピック代表 内定~!
(拍手と歓声)
10年余り 日本には福島の前を走る選手はいなかった。
オリンピックにも3度出場した。
28歳で挑んだリオは 予選敗退。
福島は その年のオフシーズンに
私のもとを訪ねてきた。
福島が「終わり」を口にしたのは
初めてのことだった。
今年3月 私は福島が合宿を行う


沖縄に向かった。
あれから4年。
どんな気持ちで走り続けているのか知りたかった。
福島は 一人で合宿を行っていた。
東京オリンピックを競技人生の集大成にするという。
自分の限界を更に超えたいと→
リオのあと 長年在籍したチームを離れた。
シーズンインを前に
徐々にスピードを上げていく この時期。
スタートの出方を変えようとしていた。
全盛期の動きを取り戻すのではなく→
今の感覚にマッチしたフォームを
つかみたいのだという。
痛い!
う~ん…。
ここ数年 福島は
アキレス腱の痛みに悩まされている。
最近は 国内でも敗れることも増え→
オリンピックへの挑戦を疑問視する声もあった。
あとは お願いして…。
しかし 福島の走ることへの思いは普通の人の理解を超えている。
この日 福島がアドバイスを求めていた
山崎一彦さん。
アキレス腱の痛みを克服した
元陸上選手だ。
400mハードルの
元日本記録保持者で→
福島と同じく
3大会連続でオリンピックに出場した。
練習に前のめりな福島に対し→

山崎さんは 足に負担がかかるスパイクを使わないよう目を光らせていた。
はい。
しれっと。
結局 スパイクを履く福島。
たとえリスクがあったとしても最後に信じるのは自分の感覚。
福島の当面の目標は
日本選手権の参加標準記録→
11秒80を切ること。
この時はすぐにクリアできると信じていた。
部屋で足の裏を削る。