(千代)このままお芝居する場所 のうなったら→
千鳥さんのやりたい芝居も できへんよう
なってしまうのと違いますか?
(千鳥)そこまで言うんなら→
どれだけ客が呼べるのかお手並み拝見さしてもらうわ。
(3人)おお~!
いよいよ「正チャンの冒険」の稽古が始まりました。
千代ちゃんにとって
初めての舞台稽古です。
(清子)大変だ!
リス君 お姫様を助けに行こう!
(美鈴)待って正チャン
相手は恐ろしい山賊だよ。
大丈夫。 力を合わせれば
何だってできるさ!
あそこが山賊のアジトだな。
「あんなに たくさん」だす。
あっ せや。
あんなに たくさん 山賊がいたんじゃ…。
「お姫様を助けられない」。
お姫様を助けられない!仲間を呼んでこよう!
そうだす。
そうだす。
今のは違います。
いや 今のは違…。
(笑い声)
すんまへん。(美鈴)いや うちこそ。
(シゲ)けど 千代 セリフ よう覚えてたな。
この台本 前から読んでたさかい 面白うて何べんも読んでるうちに覚えてしもて。
何や えらい天才や思たわ。
ほな そうしといとくれやす。
(笑い声)
ほな もっぺん最初から。
(一同)はい。
♪♪「オレンジのクレヨンで描いた太陽だけじゃ」
♪♪「まだ何か足りない気がした」
♪♪「これは夢じゃない(夢みたい)」
♪♪「傷つけば痛い(嘘じゃない)」
♪♪「どんな今日も愛したいのにな」
♪♪「笑顔をあきらめたくないよ」
♪♪「転んでも ただでは起きない」
♪♪「そう 強くなれる」
♪♪「かさぶたが消えたなら」
♪♪「聞いてくれるといいな」
♪♪「泣き笑いのエピソードを」
♪♪~
(千鳥)えいっ!
えいっ! たあっ!
あら いたの?死ぬか思いました。
千鳥さん 何してはんのだすか?
見れば分かるでしょ。
稽古よ。
次は 忍者か何かの役 やりはんのだすか?…なわけないでしょ。
これは趣味よ。
やらないと気が引き締まらないの。
えいっ!
ちょちょちょちょちょ!
あ~ すご~い!
お代わり どないだす?いらない。
ほな お茶いれます。
あなた 稽古あるんでしょ。
千秋楽まで来なくていいわ。
千鳥さんに言われたこと全部やって→
その空いた時間で
お芝居のお稽古するいう約束だすから。
できるの? それで。
大事おまへん。セリフ ひと言しかあれしまへんし。
ほかの人から どう思われようと
あなただけは あなたの役を愛しなさい。
初めて勝ち取った役なんでしょ。
一生忘れられない大切な役なんじゃないの?
まあ 別に構やしないけど。
どうせ今回は 清子がお情けで役をくれただけでしょうし→
最初っから あなたなんか
役者になれるなんて誰も思ってないから。
やっぱり お稽古に戻っても
よろしおますか?
駄目よ。
けど さっきは ええて…!
お酒。
はい。
あの 千鳥さんは何やったんだす?
初めてやりはった役て。えっ?
千鳥さんが初めて勝ち取りはった役て
何だす?
それは… えっ… あれ…。
えっと…。
一生忘れられへん大切なもんやて
言うてはりまへんだした?
私ぐらい いろんな役やるとね
忘れることだってあんのよ。
ほな も一つ聞いても よろしおますか?
何よ。
何で役者になろて思いはったんだす?
自分の内側から「そうせえ」て声が聞こえたんだすか?
何それ。
高城百合子いう女優さんがそないなこと言うてはったんだす。
(百合子)こう 自分の体の内側から→
そうしろ そうしろっていう声が聞こえたの。
彼女なら言いそうね。