女が一人 産まれたばかりの子どもを弔っていた。
子どものなきがらは
シロアリの巣の中に納められている。
シロアリに食べさせた後
巣ごと焼き払うことで 天に送る。
だが 子どもを殺めたのは
母である女自身だった。
その部族は 自らを「ヤノマミ」と呼ぶ。
人間という意味だ。
ブラジルとベネズエラにまたがる
深い森の中に ヤノマミの家がある。
♪♪~
私たちは 10年近く交渉を続け→
150日間という
長期の同居が許された。
だが 彼らは私たちを「ナプ」と呼び
自分たちと明確に区別した。
ナプとは ヤノマミ以外の人間
あるいは 人間以下の者。
彼らは 自分たちこそ ヤノマミ
人間だと言ったのだ。
♪♪~
森で最も多いのは 人間ではない。
恐らく アリだ。
アリは 人知れず生まれ死んで 土に かえっては→
また生まれる。
不思議な雲が かかる岩山があった。
そのふもとに ヤノマミが シャボノと呼ぶ
円い家がある。
一つ屋根の下に 150人が暮らす。
(奇声)
同居1日目。
私たちは 奇声で迎えられた。
(奇声)
ヤノマミが アマゾンの森に住み始めたのは1万年前のことと考えられている。
彼らは 独自の文化や風習を保つ
極めて まれな部族だ。
(奇声)
(奇声を出してあいさつをする)
突然 男が立ちふさがる。
近くに 片言のポルトガル語を話すヤノマミがいたが→
訳してくれたのは
ごくわずかな言葉だけだった。
(何かを唱える声)
男は 物騒な言葉を吐いたあと→
呪文のように 何かを唱え続けた。
(雷鳴)
岩山が雲で覆われると 雨が降る。
私たちは シャボノの中に自分たちの囲炉裏を作った。
そして 彼らと同じ物を食べ
彼らの言葉を覚えようとした。
こうして 4回 合計150日間の
同居が始まった。
大人たちが 森から帰ってくる。
大猟だ。
大人たちが解体を始める。
子どもたちも集まる。
シャボノの中には
家族ごとの囲炉裏がある。
そこに 首のない動物が
ぶら下がっている。
サルだ。
集団で取った食べ物は全員に 公平に分けられる。
自給自足の暮らしは
1万年 変わらない。
この村で 政府による
へき地医療が本格化したのは→
10年前のことだ。
以来 パンツ サンダル ナイフなどが少しずつ配られるようになった。
宣教師が
やって来たこともあった。
だが 立ち入り禁止の
先住民保護区となった今→
訪れる者は ほとんど いない。
(何かを言う大声)
私たちの囲炉裏の反対側から→
呪文のような声が聞こえてきた。
許しを得て近づくと→
木の樹液から作った幻覚剤を鼻に吹き込んでいる。
(強く吹き込む音)
天の精霊たちと会話するというシャーマンだ。
ヤノマミのシャーマンは
幻覚剤の力を借りて→
さまざまな動物の精霊を
体内に呼び込む。
治療の場合 呼び込んだ精霊を
病人に送り込み→
病のもととなっている悪霊を
追い払う。
(治療する声)
村には 18人のシャーマンがいたがその中に→
シャボリ・バタ 偉大なシャーマンと呼ばれる
老人がいる。
老人は 間もなく自分は死ぬのだと
言って 死後の話をした。
私たちに話してくれたのは
この一回だけだった。
人間は 死後 精霊となり
最後は 虫となって 地平に戻る。
偉大なシャーマンは