《久しぶりだ》
《あっ 花。 そうだよな》
《こんなんでいいかな》
《開店当時のままだ》
ごめんください。は~い。
あっ 五郎さん。
久しぶり。
ほんとに来てくれたんですね。
よいしょ。いやいや… いいって。
え~ ごめんなさいね
こんな格好で。
でも 急に五郎さんから
電話かかってきてビックリしちゃった。
こっちこそビックリしたよ。
仕事で国分寺まで来たんで電話したら→
足 ケガしたって言うからさ。
大丈夫なの?たいしたことないんです。
でも嬉しい
五郎さんがお見舞いに来てくれて。
ケガしてよかった。
何言ってんの。
はいこれ。
ありがとうございます。
あら あれ? もしかして→
私が バラが好きなの覚えててくれたの?
そうだったっけ?
もう!
何?
昔と変わらないんですね五郎さん。
あっ 私ったらお茶も出さないで。
ああ いや いい いいよ。
俺がやるって。
私がやります!
《何? 俺 なんか
まずいこと言った?》
<時間や社会にとらわれず
幸福に空腹を満たすとき[外:583134B86E7D90960F64C5B863196978]
つかの間 彼は自分勝手になり[外:583134B86E7D90960F64C5B863196978]
自由になる。
誰にも邪魔されず[外:583134B86E7D90960F64C5B863196978]
気を遣わず ものを食べるという孤高の行為。
この行為こそが[外:583134B86E7D90960F64C5B863196978]
現代人に 平等に与えられた[外:583134B86E7D90960F64C5B863196978]
最高の癒やしといえるのである>
どう?うん おいしいよ。
ちょっと苦いけど。
またもう。
五郎さん。 なんで五郎さんは
結婚しないんですか?
なんでって 別に理由はないよ。
家に帰っても1人じゃ つまんないでしょ?
そんな 何年一人暮らししてると
思ってんの?
そっか。
武 お客さんにご挨拶は?
ちわ。
こんにちは。
どこ行くの?
山田と図書館。
ウソおっしゃい 手ぶらじゃないの。
山田がみんな持ってきてくれんだよ。
あっ そうだ 母ちゃん。
俺 今日 肉食いたい 焼き肉。何言ってんの。
勉強しなさい ちゃんと。
はいはい いってきます。
もう。
武君 でかくなったな 今いくつ?
もう中3ですよ。
受験生なのに全然勉強しないし→
私の言うことなんて
何一つ聞かないんですから。
笑い事じゃないですよ。
あ~あ あのとき五郎さんに告白しとけば→
人生 変わったんだろうな。
え? ちょっと待って。
あのときって え いつ…。
[外:7542BC0875D546542D2435DAA99821BB]
もしもし はい
いつもお世話になっております。
《あのときって どのとき?
えっ!?》
大丈夫です。
《いまひとつ釈然としないが…。
いまや 彼女も受験生の母か。
しかし あのときってえっ どのとき?
もし俺に
あんな歳の息子がいたら…。
いかん! 柄にもないこと考えたら
腹が減った》
《よし 店を探そう》
《方向を誤ったか!?全然 店がない。
あっ 床屋さんか》
《このまま行っても見つけられそうな気配がない》
《やっぱり 駅のほうに戻るのが
無難か》
《来る途中に いろいろ店が→
あったような気がしたんだけど…ああ 武君のせいで→
焼き肉でも食いたい気分に
なっちまってるぞ》
《ウソ! 焼き肉! やった!