もう半分ぐらいまで来ました。
ボリスは私が歩いた地面の においを
嗅ぐだろうと思いました。
でも 違います。
私が進んだ道全体の においを嗅いでいます。
こりゃ 驚いた。
市場の中には入らず外側を回っていきます。
おいしいソーセージの においなんかに
負けないぞと言わんばかりです。
完全に避けています。
私が建物を1周して→
元に戻った場所に
近づいてきました。
でも ボリスは それを全く無視して→
そのまま道を進んでいきます。
より新鮮なにおいを
感じているのかもしれません。
(スティーヴ)見つけるんだ。
残り あと100メートルです。
(スティーヴ)分かったか?
もうすぐです。
到着まで 僅か10分。
参ったな… 言葉もないよ。
任務完了です。
あらゆる人が その人だけに→
特有の においを
発しているんですか?
科学的にいえば においのもとは
死んだ皮膚細胞です。
体から剥がれ落ちた皮膚細胞に
細菌が作用し→
その人特有の においが
生じるんです。
つまり
ボリスが鼻で たどっていたのは→
私の足跡そのものではなく
辺りに漂う→
私の死んだ皮膚細胞の
においだったという事ですか?
(スティーヴ)そうです。 その特有の
においがする方向へと→
たどっていったんです。
その においは→
どれくらいの時間
残っているんですか?
例えば 12時間後でも
追跡する事は可能ですか?
ええ 72時間後に においの痕跡を
探させた事もあります。
カギは周囲の環境条件です。→
風や雨は 嗅ぎ取れる痕跡が残る時間に影響しますからね。→
いい子だ。
イヌの驚異的な嗅覚の秘密→
その謎を解くカギは
鼻の内部の構造にあります。
これは
イヌの鼻のCTスキャン画像です。
すごいですね。
興味深いのは→
鼻の内側にある
渦巻き状の ひだです。
ひだを広げると 表面積は
90平方センチメートルになります。
人間の ひだと比べると
30倍の面積です。
表面積を広げて においの受容体が
たくさん入る構造なんですね?
(ネリスン)そのとおりです。
イヌの鼻には においを捉えるセンサー嗅覚受容体が→
およそ1億5,000万あります。
イヌの嗅覚が優れている事は分かりました。
でもネコは どうですか?
(ネリスン)ネコの渦巻き状のひだは→
イヌよりも ずっと小さい事が
すぐに分かります。→
表面積は僅か20平方センチメートルです。
イヌに比べて…。4分の1以下ですね。→
嗅覚受容体の数も
イヌの1億5,000万に対し→
ネコは6,000万です。
イヌには更に優位な点があります。
嗅覚に関わる脳の領域が
ネコより ずっと広いのです。
つまり においを処理する能力は
イヌの圧勝ね。
そのとおりです。
クリスに知らせるのは 悔しいけど。
ただし ネコの鼻には…。
(ネリスン)ここを見て下さい。→
口の天井部分と前歯の間に→
細い管があります。
鋤鼻器という
他のネコの においを分析する→
特別な器官です。
(ネリスン)これを 他のネコとのコミュニケーションに利用します。
主に フェロモンを感知するものです。
他のネコの居場所を知ったり→
距離を置くべきか
接触すべきかを判断する→
手がかりになります。