書によると。
どうせやっても俺は負けるからだ
めだ。
こんな負け犬のような根性のやつ
は、上の毛も下の毛も全部そって
しまう。
要するにたるんでいたときや約束を守らなかったときの罰なのだ。
>>当時は内風呂っていうのはほ
とんどないですから、
銭湯へ行かなくちゃいかん。
銭湯へ行くときに、いい青年がで
すね、
下がすっぽんぽんで入るなんていうのはもう、恥ずかしくて、風呂
にも行かれないというような状況
に追い込まれますから。
>>ちなみに吉田さんはそられた
ことは?
>>私は幸い、
危うくというときはありましたけど、一度もそられたことはありま
せんですね。
>>その厳しさは選手にだけでは
ない、
前大会のローマオリンピックで惨敗したときは、八田会長もみずか
ら坊主に。
さらに八田イズムは、
現在では考えられないような特訓
の数々をあみ出していた。
例えば。
>>あー、
疲れたー。
厳しいよな、八田会長は。
>>本当だよな。
>>おー、そんなに疲れたか。
>>八田会長、いらしてたんです
か?
>>疲労を回復するためには、睡
眠はとても大事だ。
ぐっすり寝ろ。
>>分かりました。
>>誰が電気を消せと言った!
>>寝室の電気を点灯、さらに。>>これもつけといてやる。
>>ラジオもがんがんに。
>>これでいい。
みんな、ぐっすり寝ろ。
>>普通だったら、
トレーニングして疲れた体を十分
癒やして、そして翌日に、
またいい練習をするように持って
いくのが普通のコーチだと思うん
ですけれども、
いろんなトラブルが起きたときでも動じない精神力、そういうもの
を鍛えられたということですね。
>>海外遠征の多い選手にありがちな負けの言い訳が、時差ぼけで
夜眠れず、
体調が悪かった。ならばどんな時でも眠れるように、精神力を鍛え
ておけ!これが八田イズム。
またある時は、
トレーニングだ!と、選手たちを
連れて動物園へ。
その目的は?
>>よーし。あいつとにらめっこだ。
>>えっ?
ライオンですか?
>>なんと、
猛獣のライオンと至近距離でにらみ合い。
恐怖心に打ち勝つためのトレーニ
ングだったという。
この様子は、
当時の新聞でも取り上げられ話題に。
今の時代ならパワハラとも言われ
かねないが。
>>ライオンとにらめっことかで
すね、こんなの普通は理不尽に考
えますけど、なんのためにそうい
うことをやるんだよということが
、お互い納得ずくで、だからそこ
には決してパワハラでもなんとも
ないわけ。
>>吉田さんが今でもそう思える
のには、
八田会長との忘れられない出来事があったからだという。
東京オリンピック直前。
8つの金メダルを宣言していた八田会長は、選手の選考に頭を抱え
ていた。
特に悩んだのが、絶対的王者、
ソ連のアリエフがいたフリースタ
イルフライ級。
日本人選手はこれまで彼に勝った
ことがなかった。
>>実績で言えば、今泉でしょ。
>>誰もが海外での試合経験が豊
富な選手の出場を想定していた。
しかし。
>>今泉ではアリエフに勝てない
んだ。
銀メダルはとれるだろう。
しかし、金はとれない。
>>じゃあ、誰なら勝てるってい
うんですか?
>>吉田だ。