欠かさずにやることがある。
映写室でのお祈りだ。
語りかけるのは亡き夫・昭夫さん。
座席の数は80。

従業員は雇っていない。
岡本≫これでね、ここ拭いていく。
≫あらゆる仕事を照さんが行う。
初回の上映は午前11時から。
≫調子どう?
岡本≫お二人ですね。


いつも2人で。
≫お客さんが入ると
息つく暇もなく今度は映写の準備。
初回の映画は
葬儀社が舞台の日本映画。
上映中は照さんが
ほっと一息つける時間だ。
上映終了。
ここからが照さんの本領発揮だ。
最も大切にしている、客の見送り。
感想を語り合うことでより映画を楽しんでもらう。
岡本≫ありがとうございます。
≫照さんとの会話を
楽しみに通う客も多い。
映画館の開業は、およそ70年前。照さんの父が始めた。
時は、映画全盛期。
その後、夫・昭夫さんが継いだが
僅か10か月後
病気で亡くなった。
期せずして館主となった照さん。
その後、無我夢中で走り続けた。
多くの映画人とも交流し
業界でも一目置かれる存在になっていく。
ところが、2000年
照さんにとって最大のピンチが訪れる。
隣の市に、大手の最新型の
映画館ができたのだ。
踏みとどまらせたのは
客のひと言だった。
以来、慣れない技術の仕事も

見よう見まねで1人でこなすようになった。
ところが、この日…。
なんと、スクリーンに字幕が半分しか映っていない。
すぐさま知り合いに電話をかけ
直し方を教わる。
教えられたとおりに
機械を操作してみるが
なかなかうまくいかない。
相変わらず、字幕は切れたままだ。
照さんが向かったのは…。
上映中にもかかわらず一人一人に事情を説明。
この日も、あいさつに立つ。
岡本≫どうもすみませんでした。ご迷惑かけたね、ごめんなさいね。
ありがとうございました。
また来てください。
岡本≫どうぞ、また来てください。
ありがとうございました。それ持ってきてください。
≫夜9時過ぎ。
最終回の上映が終わった。
日曜日のこの日、客は21人。
平日は1桁の日も。
岡本≫お疲れさまでした。
すいませんでした。
≫照さんの一日が終わった。
照さんは3年前から、映画館を支えたいという若者とともに
トークショーと組み合わせた
イベントを始めた。
この日のゲストは
ドラァグクイーン。
女装してショーに挑む

男性を追った
ブラジル映画の上映イベントだ。
映画館を再び、にぎわせたいと月に2、3回、開催している。
この夏、照さんが久しぶりに
興奮する出来事が起きた。
若い人たちの意見を取り入れて
上映した作品がヒット。
連日、行列となり
客席が満席になったのだ。
<拍手>
阿部≫船越さん、込み上げるものがありますね。
船越≫すばらしい。
純さんもこういう映画館すてきですよね。
美保≫そうですね。
作られた映画館似たようなものばかり
やっているけどと、チョイスして
本当に手作りの映画をやってくれるところが今なくなっているから
うれしいです。
船越≫本当にうれしいよね。
増田≫映画館も
古めかしくて味わい深いけど
照さんと一緒に
雰囲気を作ってくれているところ
がいいと思ったし
87歳で新しい企画で若者たちとというチャレンジ精神が。
船越≫すばらしいですね
昔の映画を掘り起こすだけでは
なくて、「カメラを止めるな!」
なんて、今新しい映画をちゃんとここで上映してね。
しかもトークを


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