よろしく頼むよ。
わかりました。
（携帯電話）
ともみさん。
山崎先生の出身地ママに それとなく訊いてみた。
秋子さんの言うように
千葉のほうらしいよ。
やっぱり？ 我孫子でしょ？
そこまでは聞かなかったけど。訊いてみる？
いい。 あんまり詮索すると
怪しまれるから。
（ノック）
はい。
お茶をお持ちしました。
あっ ありがとう。
美津の留守の間
２～３日休んでもいいのよ。
でも こんな広いお屋敷ですから
いろいろ お仕事はございます。
そうね。
旦那様も お客様もお見えにならないと→
広すぎて 何だか落ち着かない。
昔は ご苦労なさったとおっしゃいました。
いや それを忘れないためにも
こうして セコセコやってるの。
でも もう…
そんな事なさらなくても。
それは違うわ。
いつ 昔に逆戻りするかわからない。
あなたにだって
わかってるでしょう。
私と美津の暮らしが
どんなに不安定なものか。
いいえ。 旦那様と奥様の関係は
変わらないと思います。
幸せなんてね
風船みたいなものよ。
膨らめば 膨らむほど
壊れやすくなる。
《膨らませてるのは
お母様じゃないの？》
覚悟はできてるの。
そうなったら なったで→
母娘で 故郷に帰りましょうって。
お故郷は熊本でしたね。
また 洋服屋でも始めるわ。
帰るところがあるお方は幸せです。
私なんか そんなところ…。
あなた お故郷どちら？
千葉でございます。
千葉… のどちら？
九十九里で。
ああ… 海のほうね。
でも 親の関係で
県内あちこち…。
どこと どこ？
佐倉とか柏 我孫子…。我孫子？
いつ頃までいたの？
高校生の時 東京に移りました。
そちらに ご親戚とかは？
ございません。
もう何年も行った事も…。
ないの？はい。
そう…。
ああ せっかくのお茶冷めちゃうわね。
どうぞ。
♪♪～
♪♪～
いい空気だね。
あっ すいません。
ちょっと伺いますが→
あの 東町１の９の１６は
こちらですよね？
ああ ９の１６は うちだが？
武田信造さんって方は？
それは以前 住んでた人だ。
今 どちらに？
わしらが来る前に亡くなったよ。
ああ… ご家族は？
詳しい事は知らんが 父親と息子と
２人暮らしだったらしいな。
息子さんと？
ええ。
東大を出て
出世なさったそうですよ。
お名前わかりますか？
確か マサ何とかさんて…。
マサ何とか…。
正彦さんじゃありませんか？
さあねぇ…。 私達は
お会いした事がないもんですから。
どうも すいません。
（携帯電話）
はい？
ともみさん。
山崎先生の事だけど 奥様は
亡くなったって言ったわねぇ？
うん ７年前に。
山崎っていうのは 奥さんの名字で先生 婿入りしたんじゃない？
婿入り？