彼こそが佃製作所ならぬ、株式会社アオキの青木元社長。
東大阪の阿部寛といえる男である
。
青木さんの会社は、アメリカの大
手航空機メーカー、ボーイング社
の認定工場として、主に飛行機の
機体部分の金属部品を製造。
不況にもかかわらず、過去最大の
黒字を上げる優良企業だった。
その手腕を買われ、地域に活気を
取り戻すという大役を任された青
木社長だが。
>>とはいえ、何をすれば東大阪
に活気が戻るんだ。
今のなし!
>>先行きは全く見えていなかっ
た。
すると。
>>でも社長、
東大阪らしいものを作れば、PR
になるんじゃないですか。
>>そうだなあ。
東大阪といえば、歯ブラシからロケットまで、なんでも作れる技術
力が売りだ。
>>ロケット?
それだ、社長!ロケットやりまし
ょう、ロケット。
>>そうか、ロケットだ。
ロケットを飛ばすんだ。
>>やりましょう!
>>よし、ロケットだ。
>>夢は大きくと、突如、立ち上
がったロケット計画。
しかし。
>>予算がないと。
予算がいるんやと、金が。
それやったら青木さん、ロケットはちょっと難しいけどやね、この
小さな人工衛星やったら、
この東大阪で作れるかも分からんと言われて、そのとおりですがな
と言うて、それをやったんです。
>>さすがにロケットは、という
ことで、人工衛星に計画変更。
とはいえ、
人工衛星を作るにもばく大な資金
が必要。
有志が集まり、衛星打ち上げのた
めの組合を結成し、青木社長は資
金を調達するために奔走したが、
世間の風は冷たかった。
>>中小企業が人工衛星を飛ばす
なんて無理でしょう。
>>お願いします。
資金さえあれば、技術には自信があるんです。
これは東大阪の、いや、日本の夢
なんです。
>>青木さん、
夢にお金は貸せないですよ。
>>そこをなんとか。
お待ちください、話だけでも聞い
てください。
くそっ!
>>みんなにばかにされた。
中小企業にできるはずがないがなって言われたんです。
>>お願いします。
>>東大阪の町工場が人工衛星を飛ばすという夢物語に賛同してく
れる企業はなく、資金集めは困難
を極めた。
さらに、想定外の逆風が。
2001年9月に起きた同時多発テロ事件。
アメリカの景気は低迷し、ボーイ
ング社から発注を受けていたアオ
キは、創業以来、
未曾有の経営難に陥っていた。>>社長、もうだめです。
当社始まって以来の大赤字で、
このままでは会社がもちません。人工衛星は諦めましょう。
東大阪の前に、
このままじゃうちが潰れますよ。>>確かに会社が潰れてしまった
ら、元も子もない。
>>ああ、どうすりゃいいんだ、くそ!
>>このままでは町を元気にする
前に、
自分の社員を路頭に迷わせてしま
うかもしれない。
>>もう、だめかもしれない。
>>夢を諦めかけたそのとき、人
工衛星計画に転機が訪れる。
>>えっ?
総理が俺に会いたいって?
>>なんと、当時の総理大臣、
小泉純一郎氏がプロジェクトに興
味を持ち、青木社長との面会を持
ちかけたのだ。
>>大阪で、
まいどということばがあるんで、
まいど1号という形で一応、
愛称やってます。
名前は決まってるんかと質問され
たんです。
そのとき正直言うて決まってなかった。
とっさに、まいどでんがなって言