2019/08/19(月) 13:05〜13:55 プロフェッショナル 仕事の流儀・選「我流、肉道〜精肉店店主・新保吉伸〜」[解][字]

その男の技術は まさに神業。
名もなきノーブランドの牛肉が
その手にかかれば→
最高ランクを超える味へと
変貌を遂げる。
独自の熟成技術で
日本の肉を変えたとも評される→
孤高の精肉店 店主。
ブランド 格付け 大嫌い。
あえて高級和牛を買わない新保を
異端視する同業者もいるという。
和牛には
その価値を示す明確な指標がある。
A5をトップにC1までの15段階。
柔らかさを示す脂の量や肉の光沢。
赤身とサシと呼ばれる脂身が
きめ細やかな層を成すほど→
市場価値が高い。
だが 新保が狙いを定めたのはA2。
しかも 群を抜いた高齢の牛。
新保が好むのは 経産牛と呼ばれる出産を繰り返した繁殖用の雌牛。
肉質は固く あえて手を出す業者は少ない。
(競りのアナウンス)
A5の人気牛が 次々 1キロ
3,000円近い値段で落札されていく。
一方 新保が狙いを定めた経産牛。
店に戻った新保。
ドライエイジングと呼ばれる熟成方法を→
新保ならではの技術で進化させ→
あの 経産牛の熟成に取りかかった。


新保が「手当て」と呼ぶ作業は50キロ以上ある巨大な塊を→
牛の骨格や肉の付き方を
知り尽くした新保。
うまみを閉じ込めるという。
続いて 新保ならではの熟成の手当てに入った。
その肉に最適な熟成を施すため→
まず 五感を使って肉の特性や状態を見極めていく。
新保は この水分を抜く下処理に
時間をかける。
部位ごとに 吸水率が異なる
紙や網を使い分け→
包み方までも変える。
更に 湿度を細かく調整できる特製の冷蔵庫で寝かせる。
ここからが正念場。
うまみや香りを引き出していく。
重要な役割を果たすのが
微生物の温床となっている この肉の塊。
新保は研究を重ね 熟成に最適な微生物を
9年かけて育ててきた。
乳酸菌や酵母菌などの菌が
肉のタンパク質を分解し→
2週間後 その証拠となる白いカビが
表面に生え始めた。
新保は毎日 見回っては
熟成の度合いを確認する。
新保が狙うのは 熟成のピーク。
うまみが最大になりながら経産牛の個性が失われない→
僅かなタイミング。
求める肉を こう表現する。
予定より10日ほど早いが


切り上げる決断をした。
新保さんは 手当てした肉を
生産者のもとへ届けることにしている。
この日は あの1キロ733円で競り落とした
経産牛の生産者。
2年前まで この牧場はA5ランクの
霜降り牛を育て 生計を立ててきた。
だが 高い格付けのために
過剰に太らせる成育方法に疑問を持ち→
方針を変えたという。
経営は成り立っている。
その思いは 更に強くなっている。
この日 訪れたのは肉牛ですらない酪農牛を育てる農家。
年をとり 満足な乳を出せなくなった
酪農牛は→
今や 料理人の間では
A5の霜降りよりも希少価値が高い。
♪♪~
♪♪~
(取材者)きれいですよね 景色が。
新保は 高層マンションの一室にある料理教室を訪れていた。
授業で新保の手がける肉を使いたいという
申し出を受け→
実は 新保のもとには
その肉を使いたいと→
星つきのレストランをはじめ
年間300軒以上もの依頼がある。
だが 今は 熟成肉の扱いについて
正しい知識があると認めた→
40軒の店だけにしか卸していない。

遠慮は一切ない。
腕は確か。
新保は 更に自分の肉を使う目的を問い始めた。
そのさなか 気になる要望が出てきた。
料理家は 新保が扱う肉の中でも→
豚は流通の少ない
希少品種に限って使用し→
教室の売りにしたいという。
料理人として肉の個性と向き合える人物か。
新保は 肉が食される最後まで責任を持つ。