2019/09/17(火) 00:20〜01:10 プロフェッショナル 仕事の流儀「医療器具開発者・西村幸」[解][字][再]


西村 幸。
西村のもとに舞い込んだ…

これまでの形状とは全く異なる→
ワイヤー刃のハサミの開発。
従来のハサミは電流を流して発生させる熱が→
ハサミ全体に分散し
切れが鈍ることがあった。
だが ワイヤー刃の場合
電流の熱が分散しないため→
切れ味が増すという。
この新型ハサミができれば→
大腸よりも更に壁が薄い十二指腸でも
安全な治療の可能性が広がる。
新型ハサミの試作が始まった。
まず ハサミの刃の部分を削りワイヤーを付けるスペースを作る。
これまでより小さなハサミ。
研磨する熱が じかに伝わりやけどしやすい。
(削る音)
ハァ…。
刃の代わりを果たす…


これをどう取り付けるか。
う~んと…。
ワイヤーを留めるには台座となる穴が必要だ。
台座となる穴の直径は 0.4mm。
だが あまりにも小さく穴を開けるための道具がない。
なければ 自分で作る。
作った道具で 台座の穴を開ける。
厚さ0.5mmの本体に
0.4mmの穴を開ける。
やってのけた。
(削る音)
続いて 本体の先に溝を掘り
ワイヤーを留め置く場所を作る。
ハァー! 息が詰まる。
最後に 本体にワイヤーを留めるため溶接する。
コンマ数ミリの手作業。
ワイヤーは 狙いどおりに留まった。
これで終わらないのが 西村流。
バリエーションの違うハサミを作り始めた。
(削る音)
削る深さや ワイヤーを留める位置を変えていく。
更に ワイヤーの種類や太さも変える。
どれが最も医師の求めにかなうかは実際に使ってもらわないと分からない。
とことん追求する。
できなさそうと思っても→
とにかく とりあえず形にする。
そして作っては また 考える。
(西村)はい おいで。 さあ おいで。
試作は1か月続いた。
ハサミを

医師のもとに持っていく日となった。
(取材者)ようやくですね。
12本のハサミを用意した。
お願いします。
(西村)よろしくお願いします。
(西村)すいません ありがとうございます。
うわ~ すごいな。
新型ハサミの切れ味は どうか。
1本ずつ 試していく。
(電子音)
ところが…。
どれも思っていたほど
切れ味が さえない。
更に 別の問題点が浮かび上がった。
(西村)そっか~。
切った組織が ワイヤーと本体の隙間に
たまってしまう。
翌日。
早速 改良に取りかかる。
切れ味については
ワイヤーを細くすれば解決する。
だが…。
組織が隙間にたまる問題はやっかいだった。
ワイヤーの太さと同じ厚みになるように
本体を極限まで削ると決めた。
その2日後のことだった。
西村は 山形にいた。
1年半ぶりの 内視鏡による検査だった。
診るのは初代の極小ハサミを共に開発し→
同時に西村のがんを発見してくれた

本間さん。
すると…。
大腸の壁に 2cm大の腫瘍が見つかった。
本間さんは すぐさま治療を始めた。
腫瘍は無事 切除。
(本間)いや~ でも良かったです ほんと。
がんと生きて 11年。
この先 どこまで開発できるのか。
西村は言う。
「悩んでも 始まらない」。
山形から戻った西村。
課題克服の試作に挑む。
ワイヤーは 切れ味の向上のためより細いものでいく。
撚られたステンレス製のワイヤーをほどき
その中の1本を使う。
太さ 0.11mm。
ワイヤーの太さに合わせハサミ本体の厚みも削る。
厚さ0.5mmある本体を半分以下にする。
これに 0.1mmのワイヤーを固定できれば完成だ。
3週間後。