2021/01/17(日) 14:00〜14:30 日本の話芸 笑福亭鶴二 落語「高津の富」[解][字]
当たる気遣いもなし。→
また 当たったところで 千両やそこら…」。
「まあまあ… そうでっしゃろうけども→
お買い上げ頂いたんでございますから
どうぞ お収め頂けますように」。
「ああ そうか。 分かった
ほんなら まあ これはもろうといて→
後で鼻紙になどしようか。
あっ こうしよう。→
どれが当たっても お前さんに半分あげる
っちゅうことにしようか」。
「半分と申しますと?」。
「まあ 一番の千両が当たったら5百両。→
5百両なら250両。 3百両なら150両」。
「えっ!? それを この私に?→
こりゃ また
たくさんに頂戴いたしまして」。
「まだ当たってへんがな。
話が早すぎんねん。→
とにかくな おなかがすいてますねん。
早いことな ごはんの支度をしておくれ。→
あっ その前に
ちょっと こんなことやりたい。→
熱燗にしてな 7~8本。
いやいや あては何でも構へん。→
うんうんうん お前さんに任したさかい
適当に見繕うてな。 頼みましたで。→
おい! ほい!」。
「行ったな。あ~ また ほら吹いてしもた。→
何で わしは こない ほらを吹く癖が
あんねやろな。 ほんまに。 ええ?→
しかしな
あの宿屋の主も 宿屋の主やで。→
自分のうちの中に 鳥取砂丘と宍道湖やて。
わしが見てみたいわ。→
は~あ。
あんまり ほら吹きすぎたさかいに→
ほんまに もう 大事にしもうてた
最後の虎の子の1分→
とられてしもうた。
明日から からっけつやな。→
は~あ。 まあまあ しかしな
あれだけ言うてたら→
まんざら 宿賃の催促もしよるまいにな。→
まあ 『明日は明日の風が吹く』というやっちゃ!」。
…なんて
屈託のないお方でございまして→
それから もう
おなかいっぱい ごはんを食べて→
ゆっくり お酒を飲んで
ゴロッと横になってしまいます。
明くる日の朝 もう 用事もないのに
早うから起きだしますと…。
「はい おはようさん」。
「あっ 旦さん お早いお目覚めで」。
「主の姿が見えんが どうかしましたか?」。
「今朝方から ちょっと用足しに出ておりますのん」。
「ああ そうか。 いや 私もな うん
あの… 昨日言うてた→
2万両ほどの金の取り引きで
先方へ行ってこようと思うております。→
まあ いずれ 帰りはな
夕景になると思いますけども→
私の部屋 まあ これというて
大事なもんはないけども→
ちょいちょい なっ 気ぃ付けて
見といておくんなされや」。
「はあ お早うおかえり」。
「はい」。
ポイッと表へ出ましたが
もう懐には 一文もない からっけつ。
しかたがないので 大坂の盛り場を
あちらこちらと見物いたします。
話 変わりまして こちらは高津神社。
久しぶりの富くじやというのでもう皆が 押し合いへし合い。
この人出を当て込みまして ぶっちゃけ
商人が ぎょうさん 店を出しております。
もう 世話方は さも忙しそうに
羽織袴で うろうろ うろうろ。
横手には 11~12の男の子が
熨斗目の着付けには金襴の裃→
手には
柄の長い錐のようなものを持たせて→
立たしてございます。
群衆は もう 我一にと皆が好きなことを言うておる。
「もうし どうです えらい人でんな」。
「ほんに えらい人でんな。久しぶりの富くじですさかいね」。
「この中から たった一人
千両当たる人がいてまんねんで」。
「もう よっぽど
運の強い人でっしゃろな」。
「にいさん あんたは?」。
「ようけや おまへん。ようけや おまへん。→
たった一枚だけ。 番号がよろしい。→
辰の八百五十一番 辰の八百五十一番。これが 私に当たりまんねん」。
「当たりまんねんって
一番の千両でっか?」。
「いえいえ 二番の5百両」。
「もう そんなことが分かってまんの?」。
「ええ ちゃんと分かってまんねん。 昨日ね