皮肉にも、
その1年後に不幸な子どもの生ま
れない運動が始まった。
>>不幸だと人のことを勝手にね、
決めつけることは、
おかしいと思うわね。
当の本人は不幸だと思ってへん。
生まれる前に存在自体を消すよう
な存在なわけでしょう、
私は。
生きている私たちに人権があるわけがないでしょう。
>>古井さんらの団体は、
われわれを不幸とする根拠は何かとする質問状を提出するなど、
抗議活動を重ね、不幸な子どもの
生まれない対策室は、1974年
に廃止され、運動も終わった。
旧優生保護法も反対運動を受けて、1996年に改正される。
母体保護法と名を変え、障害者へ
の手術に関する規定が削除された。
この間、
不妊手術を強制された人の数は、厚生労働省が把握しているだけで
も、
およそ1万6500人に上った。しかし、優生思想が生み出す闇は、
これだけでは終わらなかった。
おととし、
神奈川県相模原市の障害者施設で、
入所者19人が殺害され、
26人が重軽傷を負う事件が起き
た。
殺人などの罪で起訴された、
元職員の植松聖被告は、
意思疎通が取れない人間を安楽死
させるべきだ、
彼らが不幸のもとである確信を持
つことができましたなどと、
明らかに優生思想と取れる主張を
繰り返していた。
>>障害者は不幸じゃない!
>>障害者らは、
なくなることのない優生思想に対
して、声を上げ続けている。
特に問題として強く訴えているの
が、出生前診断だ。
妊娠中に胎児の染色体の異常を調
べることによって、障害を持つか
どうか判断することは、命の選別
だとしている。
>>障害児の選別の技術があると
知ったとき、
私が初めて知ったのは、
まだ20代だったと思いますけれども、
それを私が初めて知ったとき、
お前は人間じゃないから死ねと、そういうふうに言われている気が
しました。
>>5年前には、
新型の出生前診断・NIPTが導
入された。
35歳以上の妊婦が受けることが
でき、
血液検査だけで、ダウン症などの
疾患の可能性を調べられる。
>>命の選別という見方はもちろ
んあるのは分かってるんですけれ
ども、私は、
そうしたいなぁと思ったので、
今回も検査を受けさせてもらいま
した。
>>やっぱり育てる親としては、
生まれる前に知っておきたいし、
生まれるにしても、心の準備はし
たい。
>>これまでにおよそ5万800
0人が検査を受け、陽性になった
うちのおよそ8割に当たる、
729人が中絶した。実際に診断を行っている医師は。
>>そのように受け止めて、
心を炒めておられる方がいらっしゃるということは、
常に留意しておかないといけない
というふうには思っています。
ただ、出生前診断が原因で、社会
が不寛容になっているというわけ
ではなくてですね、
その不寛容な社会があるために、結果的に病気の子どもさんが出産
できないという、出生診断のほう
が結果なわけです。
結果のほうをなくしても、原因が
解消されなければ、いつまでたっ
ても同じことになると思いますの
で。
>>まだまだ障害者に寛容とはい
えない社会を変えるためには、何
が必要なのか。
その答えを見つけることは難しい
が、取材中に出会った女性の、あ
ることばが忘れられない。
>>誰の中にも優生思想はありま
す。
やっぱり誰が劣っているのか、誰
が優秀なのか、誰ができるのか、
誰ができないのかっていうこと、