◆うんざり?
お父さん、手伝ってもうとって、
よう言えますね。
それはお母さんのせりふです。
◆今までね、結婚して
もう40年近く、朝出ていったら、
晩まで帰ってこなかったから、
それは自由やったし、
何にも怒らへんし、
何買っても、どこ行っても何も言
わへん人やから。
◆社長ですよ。
◆それが、思わん、
この年になってずうっと一緒にお
るから。
◆ええんちゃいますの、お母さん。◆それが初めて気がついた。
あんまり一緒におったらちょっと…。
やっぱり離れてるほうが…。
◆お父さんは正直ね、
おってくれたほうがね、
絶対ありがたいじゃないですか。
横におってくれたほうが。
◆まあ微妙やけどね、
1人でできんで仕方がないね。
◆具体的に一緒におったらしんどいなと思うことは
何ですか?
◆種類は今、4種類やけど、
いろんな注文があるから、容器に
お好みとか
モダン焼きとか、焼きそばとか焼
きうどんとか、
私、細かく書くんです。
◆当然ですよ、
お母さん。
◆マヨネーズなしの人とか、
ショウガなしとかいろいろ、
注文があるんやけど。書いているとき、たまに
もう書かんでもええとか言ったり
することが、
ちょっとかちんとくる。
◆考えたら、
私は社長夫人で、
家のことだけやっとったらええのに。
お母さん、それ書いてるほうが自
分も間違えへんし、
◆そうなんです。
◆持って帰ったお客さん間違えへ
んし。
◆言うてください。
◆お客さんのためです、それは。
言い方とかどうですか。
◆言い方はちょっと年と共にきつ
くなってきたよね。
◆普通は年と共にやわらかくなる。若いときはね、
ありますよ。
嫁はんと言うときがありますけど。今のほうが?
◆年いったほうが
ぱっと言ってしまうときがある。
◆それはやっぱりお父さん的には、ずっと社長で、
みんながお父さんが言うたことを
はい、わかりましたと、
今まで言ってましたから、
言うとってください。◆私、嫁ですけど。
◆従業員じゃないです。
◆従業員じゃないですけど、大丈夫?
お父さん、
何で目を合わさないんですか。
さあ、
反論、反論してください、よーい、スタート。
◆無理やわ。
何の反論もないです。
◆反論なし。
お母さん、勝利。
◆やった。
◆口出ししないことを誓ってもらっていいですか。
指切りしてください。
お父さん、お母さんと。
◆きしょいなあ。
◆私がその言葉、
そっくり払いたい。
◆どうでしょうか、このご夫婦でやっていこうということですけれ
ども、お父さんの目標というか。
ございますか。
◆目標は、1日でも健康で、
長く続けたいというだけで、それだけやね。
◆なら、倒れるまで?
◆はい。
◆お母さん、どうでしょう。
◆いやもう支えていきます、
倒れないように。
◆ほんまですか?
◆体力あるから。
でもすてきなな夫婦像、
見せていただきました。
これもらってください。
「となりの人間国宝さん」、
認定させてもらいますので。
◆もったいない。
◆いや、うれしい。
◆おまえ、さわるな。