2019/12/31(火) 10:20〜11:50 NHKスペシャル選「緒方貞子 戦争が終わらない この世界で」[字]


過酷な現場でした。
緒方さん率いる UNHCR

国連難民高等弁務官事務所は→
スイス・ジュネーブに 本部があります。
新しいトップが来ると聞いた時部下たちは…。
緒方貞子なんて名前
聞いた事ないよ。
何で 日本の学者なんかが
選ばれたの?
決まってるよ。
日本からの援助金が目当てさ。
ねえ 聞いた?
新しい高等弁務官の事。
ああ。 今 話してたんだ。
アジア女に弁務官が務まるもんか。
どうせ また
すぐに辞めちゃうんじゃない?
緒方さんが向かった
国境の山岳地帯は→
大混乱に陥っていました。


国境を越え トルコに逃れようとする40万人のクルド人。
ところが トルコは
国内にいる クルド系の武装勢力に→
悩まされていたため
受け入れを拒んだのです。
迫り来るイラク軍。
寒さと飢えで 人々は絶望のふちに追い込まれていました。
今 あなたが望んでいる事を
聞かせてくれますか?
温かい食べ物を…。
ねえ 私たちを守って!
分かったわ。 約束するわ。
ソーレン…。
ジュネーブの本部に戻って
緊急の幹部会議を開きましょう。
了解です ミセス緒方。
緒方さんは UNHCRの歴史上いや 近代史の中でも→
最大の緊急事態の一つに
いきなり直面した訳です。
世界が注目する中
難民高等弁務官として→
まさに
洗礼を受けたといえるのです。
クルド人 40万の命を左右する
重大な会議。
更に ここには
UNHCRの根幹に関わる→
厚い壁が
立ちはだかっていました。
トルコとの国境で 立往生している

クルド人のために→
UNHCRは 何をすべきか
皆さんのアドバイスを頂けますか?
難民というものの定義を
よく考えてみて下さい。
UNHCRが定義している
難民というのは→
「迫害を受ける恐れがあるため
国外に逃れている人であり→
自分の国から保護してもらう事が
できない人」ですよね?
そのとおりです。
彼らはイラクの国内にいるのですから難民とは見なされないのです。
まさに。
法務官の言うとおりですよ。
彼らが難民ではないなら 我々は
保護すべきでは ありません。
そんな事をしたら…
ルールを犯す事になります。
モジャン。 あなたは
中東を担当する責任者として→
どう お考え?
そうですね…。あんなにも多くの人が→
寒い中に取り残され
命の危険にさらされているんです。
見殺しにする訳には いかないと
思うんですが…。
でもね いいですか?
本来 問題とすべきはトルコが 難民を拒絶し→
国境を閉ざしている事ですよね。

それなのに UNHCRが→
イラク国内で とどまっている人々を
支援したら…→
それは 難民を受け入れない
トルコの姿勢を→
認める事に
なってしまうじゃありませんか。
私も同意見です。→
それは 結果としてUNHCRの権限を弱めてしまいます。
そうじゃないですか?
議論は 2時間を超えました。
緒方さんは 一人一人の言葉に
耳を傾け続けました。
皆さん… 貴重な意見を
ありがとうございます。
私は… 保護する事に決めました。
イラク国内に とどまっているクルド人を保護します。
なぜなら UNHCRは いつも苦しみを
受けている人たちのもとに→
そして そばにいる必要が