2020/02/29(土) 21:00〜21:50 NHKスペシャル 東京リボーン(4)「巨大インフラ 百年残す闘い」[字]


道路橋を連結するための穴がなかなか かみ合わない。
連結させるには 道路橋の穴と
連結用の板の穴を重ね合わせて→
ボルトで締める。

しかし 160個の穴と穴が重なり合う一点を捉えきれない。
ミリ単位の繊細な調整は
クレーンでは不可能だ。
どんな巨大工事も
最後は やはり 人の手である。
調整を続けて10分。


まだ 穴は重ならない。
残された時間は あと20分。
万が一 時間切れになればモノレールや羽田線の運行に影響する。
一瞬 一つの穴が重なりかけた。
すかさず棒をねじ込み ズレを止める。
間髪入れず ボルトを差し込む。
重なり合った穴を見つけてはボルトを差し込んで締め上げていく。
徐々に 160個の穴が重なり合い始めた。
3時25分 全てのボルトを締め上げ連結を終えた。
予定よりも30分遅れ。
モノレールに電流が流れるデッドラインまで→
5分を切っていた。
百年もたせるための首都高大改造。
今後 この橋を羽田線へとつなぐ工事が
8か月続く。
ハハハ… はい。
いつも走っている首都高がこんな大手術が必要な状態だったとはな。
とんでもない所に造ったはいいが→
こき使われたあげく過労死寸前まで来ちまったわけだ。
とにかく新しいものを造れば
みんながハッピーになる。
そう無邪気に信じられていたんだろう。
1964のツケを返す闘いが…。
ほら あんたの足元でも続いてるぜ。
異様な いでたちの男たちが首都高の高架に向かっていた。
ここは 日本橋川の
上空に架けられた高架の裏側。
特殊な技を身につけた男たちが
作業に臨もうとしていた。
安全に帰るとは

決して大げさな言葉ではない。
まるで スパイダーマンのように
道路の裏側にへばりつく。
油断すれば 川に真っ逆さまだ。
彼らは 首都高の点検作業員。
たたく音の僅かな違いで
道路内部の異変を探っていく。
首都高では 老朽化が深刻な5つの箇所を
丸ごと造り替える→
大改造計画を
進めているが→
それ以外の箇所でも 老朽化は進んでいる。
全てを造り替えることはできない。
そのため
人手をかけ 僅かな損傷も見逃さず→
今ある道路をいかに長生きさせるかに
全力を注いでいる。
例えば この常設の足場。
これまで首都高には足場は1割ほどしかなかった。
常に足場があれば
点検や補修が格段に容易になる。
首都高では 5年前
新たに 6,000億円余りの予算を確保し→
メンテナンスに投じている。
造ることから 直し 残すことへ。
首都高が 目標を大きく変えた
きっかけの一つは これだった。
1995年 壊滅的な被害をもたらした
阪神・淡路大震災。
阪神高速神戸線は

600メートル以上にわたって→
横倒しに倒壊した。
巨大インフラ崩壊の恐ろしさを思い知らせた。
しかし 関係者が震え上がったのは
それだけではない。
地震の調査を行った専門家は
衝撃的な発見をした。
阪神高速に接続する
有料道路での発見だった。
高架を支える橋脚を横切る 大きな破断。
地震の影響だけでは説明がつかない→
常識を覆すものだった。
現地調査で この亀裂に注目したのは橋梁工学の専門家 三木千壽。
日米を股にかけてきた
土木界の第一人者だ。
この謎の亀裂が発生した発端は→
地震の衝撃ではなく疲労亀裂ではないかと疑った。
疲労亀裂は
力が繰り返し加わることで発生する。
疲労亀裂 それ自体は小さなものでも→
地震をきっかけに 一気に大破断につながりかねない。
高架の道路橋に潜んでいた危険性が
震災を機にあらわになった。
日本の道路建設には 道路は
まず劣化することはないという→
安全神話があった。
国による道路橋の設計の指針には→
長年の使用に伴う影響を
考える必要はないと明記されていた。
…ってことを