2020/03/01(日) 03:05〜03:55 NHKスペシャル選 ホットスポット 最後の楽園(3)「オーストラリア」[SS][字]
翌日砂漠は その表情を劇的に変えた。
水を たっぷりとたたえた
大きな池が誕生したのだ。
鳥たちが群れを成してやって来た。
♪♪~
カンガルーの母親も 無事に
たどりつく事ができたようだ。
袋の中の子供も助かった。
この雨によって多くの命が救われたのだ。
♪♪~
それから およそ1か月。
子供は すっかり大きくなり→
母親の袋の中にはもう収まらない。
初めて踏み出す 外の世界。
そして この時 アカカンガルーの更に驚くべき能力が明らかになる。
母親が 尻尾の上に座って
奇妙なポーズを取り始めた。
出産の兆候だ。
袋の中の新たな命。 母親はいつ みごもったのだろうか。
実は ここにアカカンガルーが→
不毛の大地で繁栄した最大の秘密がある。
旅の途中まで 母親の袋の外と中に
2匹の子供がいた。
ところが この時
母親の体の中には もう一つの命→
受精卵があったのだ。
しかも 受精卵は→
環境が悪化すると 成長を止め
休眠状態になるという。
おなかの中に 休眠した受精卵を
宿したまま 旅を続けていた母親。
環境が回復し
袋の中の子供が外に出ると→
受精卵は 再び成長を始める。
袋の外と中 そして受精卵。驚いた事に アカカンガルーは→
成長段階の異なる3つの命を
同時に育てる事ができるのだ。
そして この独特の能力にこそ→
有袋類が繁栄した秘密があるという。
オーストラリアの…
ここにある 一つの化石によって→
これまでの定説が
覆される可能性が出てきました。
およそ5500万年前の地層から
掘り出された 1本の歯。
この凸凹のある形は
有胎盤類の特徴です。
今から5500万年前 オーストラリアには→
これまで存在しなかったと考えられていた→
私たちの仲間 有胎盤類が→
有袋類と共に暮らしていた事が明らかになったのです。
かつて オーストラリアにいたという
有胎盤類。
ほかでは
大繁栄したにもかかわらず→
なぜ オーストラリアでは
絶滅してしまったのでしょうか。
有胎盤類は 妊娠期間が長いため→
環境が変わると母親とおなかの胎児が→
共に死ぬ可能性があります。
しかし 有袋類は→
ごく小さな段階で出産し
袋で子育てをするため→
環境が悪化しても
母親は 生き延びる事ができます。
そして 環境が回復すると すぐに
新たな子を産む事ができるのです。
つまり
乾燥が厳しいオーストラリアでは→
有袋類の繁殖方法が
有利に働いたのです。
湿潤な森から
乾燥した不毛の大地へ。
誕生以来 劇的に変わってきた
オーストラリアの気候。
それを乗り越える事ができたのは
有袋類でした。
そこには 小さく産んで
袋の中で大きく育てる。
そして 環境の変化に合わせて
子育てのタイミングを調節するという→
優れた能力があったのです。
なんという奇跡。
大激変を乗り越えてきた
有袋類たち。
しかし 彼らが暮らす大地は→
今 かつてないほどの速さで変わり始めている。
最新の報告によると ここ50年で→
平均気温が1度近く上がったという。
このまま上昇が続くと
干ばつの時期が→
今より2か月も延びると
考えられている。
そして 干ばつに伴って発生する
森林火災。
その発生率は
2割以上も増すという。
森で暮らす生き物たちの
生息場所が 脅かされている。
こうした背景には 僕たち人間が