>>左右2本の腕の動きが少しでもずれれば、
バランスを崩すことになるだけに、
細心の注意が必要だ。
これは、
別のクレーン船がことしの台風被害で座礁した船を救助する様子。
外でクレーンの動きをチェックす
る作業員と無線を交わしながら、
数ミリ単位の緻密さで動かしてい
く。
>>さっき測ったとき、
9.2から9.4やから、潮がいっぱい下がっても60センチやね
ん。
>>もうちょっと下がってもらえます?
>>じゃあ、もうちょい下がり。
>>常に海の上の作業になるため、
重大な事故にもつながりかねない。
風によるバランスの狂いが、
最大の敵だ。
>>武蔵の大きな船体の中に入ってきました。
うなり声を上げて動いているエン
ジンが、
私の横にありますけれども、この
船のエンジンは、
船が走るためのエンジンではない
んです。
武蔵をはじめとするこの大型のク
レーン船というのは、
自分で走るのではなくて、移動す
るのは、
船に引っ張ってもらって走ります。
>>みずから移動できないクレーン船。
時には、
巨大な荷物をつり上げたまま移動する、
難しい作業もあるが、多くの人た
ちに支えられ、
難局を乗り越えてきた。
そんな武蔵の船内には、実は、
乗組員の居住スペースがある。
クレーン船は常に沖合にあるが、船のメンテナンスは毎日欠かせな
いため、乗組員が1年中、船内で
生活しているのだ。
寝食を共にしながらコミュニケー
ションを深めていくことも、
クレーン船の乗組員を育て、
次の世代に引き継いでいく大切な役割となっている。
>>どういうきっかけで、
就職を?>>高校が僕、
水産高校で、
沈んだ船を引き上げたり、いろいろクレーンがあったり、
大きいものを運んだりするってこ
とに興味を持って、この会社に来
ました。
>>やっぱり一緒に生活をすると
いうことは大事ですか?
>>コミュニケーションを取ってるから、
教えてくれることもありますし、
雰囲気がぎくしゃくしてたら、言
いたいことも言えないじゃないで
すか。
きょうは危ないから、これをこう
してくれって。
そういうこともコミュニケーショ
ンの一つから始まると僕は思いま
すね。
>>乗組員が住み込みで支えてき
た武蔵。
平成に入り、
大型公共工事は減少し、
出動も最盛期に比べて半分ほどになった。
維持するだけで必要な金額は、年
におよそ10億円。
事業の効率化が叫ばれた平成にお
いて、
それでも武蔵を手放さなかったの
はなぜなのだろうか。
>>災害等のときにですね、
必ず役に立てる船であるということですね。
やっぱりこれはなくてはならない
ものですし、なくならないもので
すね。
平成を超えて、今後もずっと、残っていくであろう船であると思っ
ています。
>>一つの企業が利益を超えた社会貢献のために支えてきた巨大ク
レーン船。
それが私たちの暮らしを救い、支
え、次の時代へと引き継がれる。
>>今、
時代は平成が終わろうとしていま
すけれども、
武蔵をはじめとする、
日本が誇る大型のクレーン船の仕事は終わりを告げることはありま
せん。
また新たな時代、
新たな年に、この日本と、
そして日本人の誇りをつり上げていく、
それがこの船の人たちの誇りであ
ります。
>>やっぱりこう、
なんでもかんでも新しいものじゃなくて、大事にしなきゃいけない、
守らないといけないものもあるん